人間の精神を破壊する『凶悪海域 シャーク・スウォーム』
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90分弱のサメ映画でもほとんどが「この映画観ている間に人生を5回くらいやり直せるのではないだろうか?」と考えてしまうほど長く感じるのに、本作は160分超えである。
大体、動物が出てくるパニック映画なんてものは人を襲う動物を退治することが主題で時間を延ばしようがない。90分という時間ですら持て余し、余計な要素で薄めるだけ薄めてストーリーが崩壊している作品が珍しくない中、本作は2倍近い時間を費やしている。しかも引き延ばす手法は数多のサメ映画と同じ。視聴する拷問具である。しかもテレビ向けに制作したものを無理やり映画という体に仕立て直したため、CMが入っていたと思しき部分は黒塗りだ。雑にもほどがある。
カリフォルニアの寂れた港町にリゾート開発の話が持ち上がる。リゾート開発会社は町の基幹産業である漁業を崩壊させるため海に廃棄物を投棄し、その影響でサメが凶暴になり巨大化。次々と人を襲い始め、異変に気付いた主人公の漁師が弟の海洋学者と一緒に企業の悪行を阻止しようとするが――という内容。
この単純なお話で164分を費やすのだから、ビックリするほど中身がない。例えばサメが住民や企業の従業員を襲うのだが、人が消えても物語に影響なし。どんな殺伐とした世界でも住民や従業員が何人も消えたら騒ぎになると思うのだが......。また元々がテレビ用のためか、サメが人を襲う際は水中で人が暴れて引き込まれ水面が赤くなるだけ。サメ映画である理由が分からない。
160分を超える作品のため突っ込みどころは山ほどあるのだが、いちいちそれを記載していてもきりがない。取り合えず30分まで圧縮したら多少は観るべきところがある映画になったのではないかと思う。CGの使い回しも何度も繰り返したらボンヤリ視聴していても気付く。
どこの場面を切り取っても薄まり過ぎてエンディングに至るまでにカタルシスなど皆無。サメを追い払って魚が戻ってきたというハッピーエンドになっていた。廃棄物が除去されたという説明が皆無のまま......。最後まで雑な作品だった。Amazonで価格を見たら5千円を超えていた。誰が買うのだろう?
(文/畑中雄也)