もやもやレビュー

ワニ視点なら背筋が凍るホラー作品『ザ・クロコダイル~人食いワニ襲来~』

ザ・クロコダイル 人喰いワニ襲来
『ザ・クロコダイル 人喰いワニ襲来』
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 サメ映画にしろワニ映画にしろ、ボンクラB級映はほとんど米国産なのだが、本作は中国の作品だ。視聴を終えた瞬間、B級映画に国籍も人種も関係がないことに感動すら覚える。ひたすら酷い。ただし、ワニの描き方がやや同情的で、他の作品とは雰囲気を異にしている。

 経営不振のワニ牧場オーナーがワニ料理店にワニを売り払ったところ、そのうちの1匹が脱走。途中、男に振られたヒロインと遭遇し、大金の入ったヒロインのバッグを飲み込み逃走を続ける。当然、警察はワニを追い、ワニ料理店の店長もワニの腹の中に大金があることから追いかける――という内容。
 予告編を観る限りでは、仲間を殺されたワニが復讐のため人を散々食い殺すような印象だが、現実は哀れなワニがひたすら逃げるだけ。無論、ワニは人を襲うのだが自分を殺そうとするワニ料理店の関係者くらい。水浴びしている子供には目もくれず逃走を続け、最期は銃殺されるワニが哀れですらある。
 また、本作に登場する人物は料理店の店長しかりヒロインしかり、皆さん金金うるさい。金のために人食い巨大ワニを追跡するという行動原理は、ホラー映画らしからぬ様式。大体、ヒロインが車でワニを追いかけて銃をぶっ放しているし。
 その他にも主要登場人物が色々とブレるせいで無駄にさまざまな様式が混ざり、作品としてコメディなのかホラーなのか、よく分からないものになってしまっている。いっそのこと哀れなワニがムカつく登場人物を片っ端から惨殺して大自然に帰る内容だったら爽快感もあっただろうに。おかげで視聴者は「ワニが好きなんだなぁと思いました」という小学生のような感想しか抱けない。巨大ワニが産み落とした卵が孵化するところで物語は終わるのだが、恐怖心をまったく煽らない構成でモンスターの卵が孵ったところで特段怖くもない。

 米国の作品ではワニが恐怖の象徴として描かれているのに、本作ではワニ=食材という視点で物語が進む。この点が本作のワニを圧倒的な恐怖として描けない大きな理由だろう。
 人ではなくワニの視点に立って本作を視聴すれば、この上なく陰鬱で絶望感しかない物語に見えるかも知れない。

(文/畑中雄也)

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