もやもやレビュー

『この世界の片隅に』で、今の暮らしを見つめ直す。

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 ロングランヒットを記録したアニメ映画『この世界の片隅に』が、いよいよ9月にBlu-ray化!
 クラウドファンディングで3,374名もの人々から39,121,920円もの制作資金を集めて制作された本作の原作は、実写化もされた『夕凪の街 桜の国』のこうの史代さん。監督は、『マイマイ新子と千年の魔法』(09年)でも異例の断続的ロングラン上映を果たした片渕須直監督です。

 1944(昭和19)年2月、18歳だったすず(声優・のん)は突然舞い込んだ縁談で呉へとお嫁に行きます。その頃の呉は日本海軍の一大拠点で軍港の街として栄え、世界最大の戦艦と謳われた「大和」も呉を母港としていました。そんな見知らぬ土地で、海軍勤務の北条周作の妻となったすずの日々。

 時代は戦時中。配給物資はだんだん減り闇市でも物資が高騰し、生活はどんどん苦しくなるばかり。そんな中でも、町内の人々が協力し合い、すず自身も工夫を凝らして料理をしたり、衣服を作り直したりと懸命に生きていきます。

 印象的だったのは、お米を節約するために作られていた「楠公飯(なんこうめし)」。武将・楠木正成が非常食として考案したとされるもので、玄米にたっぷり水を吸わせて炊くことでご飯の量が増えたように感じるそう。とはいえ、「けさはえろうご飯が多いのう、飯粒がふくらんでおる」と言って食べたものの、結局薄めた味しかしなかったようですが...。

 戦時中が舞台ということで、暗いイメージが浮かんでしまう本作ですが、そこに描かれているのはいつの時代にも共通する社会や市井の人々の暮らし。命があること、健康であること、美味しいご飯が食べられること、あったかいお風呂にはいれること、きれいなベッドで寝れること、朝が来ること...。今当たり前のことが当たり前にできることをとても有難く思わされる映画です。余談ですが、公開時は某シネコンで鑑賞しましたが、鑑賞後に拍手が起きたのを見たのは初めてのことでした。

(文/森山梓)

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