いろんなパターンの「後悔」を見ると、逆にプラス思考になる。『サード・パーソン』

　脚本を手がけた作品が2年連続でアカデミー作品賞を受賞するという異例の快挙を達成した経験の持ち主、ポール・ハギス監督。彼が生み出したミステリードラマ『サード・パーソン』を御存知でしょうか。3組の男女のストーリーがうまく交錯し、最後に衝撃的な結末を迎える本作は、かなり巧妙な恋愛ミステリーなんです。

　舞台はパリ、ローマ、ニューヨーク。パリではホテルにこもりっきりで最新作を執筆している作家のマイケルと、不倫関係にあった作家志望のアンナとのストーリーが展開され、ローマではアメリカ人ビジネスマン・スコットがバーで出会った見ず知らずの美しい女性に魅了され、その女性の誘拐された娘を助けようとします。そしてニューヨークでは、元女優のジュリアが元夫と愛する息子の親権を争っていました。そんなまったく異なる3つの場所で織りなす物語が、次第に交差していきます。

　3つのストーリーに共通するのは、みんな後ろめたい事実を抱えているということ。パリのマイケルは不倫をしていて、ローマのスコットは携帯に保存された昔のメッセージを消せずにいて、ニューヨークのジュリアは親権を争っているけどお金がない！　とりあえず負のオーラ全開の3つの物語。衝撃の真相にたどり着くまでには「後悔」というピースが散りばめられています。

　でも後悔する頃には、だいたい取り返しのつかないことになっちゃってるんですよね。例えば、ローマのスコット。前述したとおり彼は、バーで偶然知り合った女性の娘が人質にとられていることを知り、お金を工面して助けようとします。ただただ、その女性を助けたいという一心で行動しているのに、その女性からはお金を盗んだと暴言を吐かれ、いかにも悪そうなマフィアらしき男に倍の金額を要求されたりと、災難が続き、途中でかなり後悔し出します。

　散りばめられた「後悔」のストーリーの共通点を見つけ出した後の衝撃の真相には、かなり度肝を抜かれます。負のオーラ全開の「後悔」を目の当たりにして、落ちるところまで落ちた人々のストーリーを見れば、「絶対こうなりたくない」と、逆にプラス思考になっちゃうこと間違いなし！

（文／トキエス）