『ダラス・バイヤーズクラブ』を観て、生きることに必死になろうと思った。
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- マシュー・マコノヒー,ジャレッド・レト,ジェニファー・ガーナー,デニス・オヘア,スティーブ・ザーン,ジャン=マルク・ヴァレ
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HIV感染してしまったカウボーイの半生を映画化した作品『ダラス・バイヤーズクラブ』。マシュー・マコノヒーやジャレッド・レトーが役作りのために大幅に減量したことで話題になった作品が、これが「生きること」についてかなり深く考えさせられる作品なのだ。
舞台は1980年代のアメリカ。電気工でカウボーイのロン・ウッドルーフ(マシュー・マコノヒー)はある日、HIV陽性で余命が30日と宣告されてしまう。当時のアメリカには認可治療薬が少なかったため、ロンは、代わりになる薬を探しにメキシコへ向かった。無認可の治療薬をゲットして本国に密輸した彼は、偶然出会ったエイズ患者のレイヨン(ジャレッド・レトー)と共に、自分と同じように苦しむアメリカのHIV患者に薬を販売する「ダラス・バイヤーズクラブ」を設立することに。
ロンは、酒とドラッグ、娼婦が好きな男。おまけに口も悪く、ギャンブル好き。そんなまったく同情できないような、どうしようもないキャラクターが、HIVウイルスに感染したことで、懸命に生きようとする。突然泣き出したり、徐々に人に優しくなっていく彼の姿を見ると、HIV感染の恐怖をリアルに感じてしまう。
本作の後半で、ロンが「死なないことに必死だ」と語るシーンがある。死を宣告されてなお、「生きることに必死」ではなく、「死なないことに必死」......それほどに、「本気で生きる」ということは難しいことであると、痛感させられた言葉だ。
そんな本作を観て、2015年に都内で20代のエイズ感染者が過去最多になったニュースを思い出した。ロンのような状況は、珍しいことではなくなってきている。「死なないことに必死」になる前に、「精一杯生きよう」と心に誓うことができる作品である。
(文/トキエス)