何かと他人のせいにしていないか猛省したくなる『ハウス・オブ・ヴェルサーチ』
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春なので財布を新調しようと、百貨店のブランドというブランドを見て回ったのですが、どれも10万近いお品ばかりで断念しました。私の意気地なし!
「ヴェルサーチ」を創立したデザイナー、ジャンニ・ヴェルサーチは、コレクションを成功させ精力的に活動していた絶頂期に、マイアミのサウスビーチで何者かに射殺されてしまいます。その後を引き継ぐことになったのは、妹のドナテラ・ヴェルサーチ。兄ジャンニが生きていた頃から自身が広告塔となって人脈を作り、共にヴェルサーチを支えていたとはいえ、デザインや裁縫に関しては素人でした。それでもブランドを潰すまいと必死になります。
しかし、ブランドを継承しなくてはならない重圧や様々なものがドナテラに降りかかり、彼女自身が崩壊していく......。その様子はあまりにも痛々しいものでした。
自分の能力が及ばないだけなのに、ジャンニが信頼し、長くヴェルサーチに尽くしてくれていたスタッフを怒鳴り散らし、こんなデザインや出来上がりじゃだめだと一蹴し、解雇するとまで言い放ったり。自身の金遣いの荒さを棚にあげ、一番上の兄を始めとする経営陣からこのままではいけないという指摘にも耳を貸さず、お酒とドラッグに走ってしまったり。そうして、何があってもドナテラの味方でいてくれた旦那にも愛想をつかされ、最愛の子供たちにも見放されてしまいます。
何もかもうまくいかないときってありますよね。しかもどん底にいる時は、ドナテラのように、周りのことや支えてくれている人の気遣いや優しささえ見えなくなる。傍から見てて痛い痛い......。
最終的に彼女は家族の支えから立ち直り、ブランドも立ち直すことができます。挫折を経験した人が再生する姿は、素晴らしく清々しいものがあります。
また、同時に挫折から学べることの大きさも描かれています。自分の失敗を、ほかの人や物事のせいにしてしまうこと、きっと誰もが一度はしたことがあるのではないでしょうか。ドナテラが挫折している様子から、その醜さを知り、自分を省みるきっかけにしてみてください。
ちなみに、本作は実話だそうで、早速ヴェルサーチに興味を持ちました。ですがやはりお財布さえ買えそうにありません。
(文/森山梓)