人間不信の人は絶対に観ちゃダメ......『鑑定士と顔のない依頼人』

　魅力的なトリックがところどころに隠されていて「もう一度観たい！」と、かなり楽しめる作品を発見した。しかし人間不信気味の人は、注意が必要である。『ニュー・シネマ・パラダイス』や『海の上のピアニスト』のジュゼッペ・トルナトーレ監督によるミステリー『鑑定士と顔のない依頼人』（2013）。主演は『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズでもおなじみの名優、ジェフリー・ラッシュだ。

　天才的な腕前を持つ鑑定士ヴァージル・オールドマンは、ある日、クレアという女性から「両親が遺した美術品を査定してほしい」と依頼される。しかし屋敷を訪ねても「風邪をひいた」「車が事故った」など、まったく姿を見せないクレア。不信感を抱きつつも、鑑定をすすめるヴァージルは、かなり価値があると思われる美術品の一部を見つけ、その調査をロバートという青年に依頼することに。

　美術品を愛し続けたヴァージルは、「リア充」って何ぞや？というほど、女性とは無縁で、結婚歴ももちろんない。しかしある日、屋敷の隠し部屋に引きこもっていたクレアの姿を目撃。それからというもの、彼女に翻弄される日々が続いていくのだ。「初めて愛した女性がミステリアスすぎる......」と悩みまくる彼は、前述の青年、チャラ男のロバートに相談する。

　ヴァージルの恋心、美術品の査定、ロバートが調査し組み立てる美術品......その全ては一つに繋がる。思わず「やられた！」と口にしてしまいそうなほど驚愕な結末とともに、なんだか人間不信になってしまった。やや人間不信気味の人が観ると、完全なる不信感に襲われてしまうこと間違いなし。

（文／トキエス）