もやもやレビュー

毒舌な人は孤独になる確率が高いのかも。『クロワッサンで朝食を』

クロワッサンで朝食を [DVD]
『クロワッサンで朝食を [DVD]』
ジャンヌ・モロー,ライネ・マギ,パトリック・ピノー,イルマル・ラーグ
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 年齢を重ねるごとに、自分の意見を曲げられなくなり、頑固になっていく人も多いのではないだろうか。「自分は自分だから、それでいい!」と言い聞かせ、まわりにも同意してほしくてついつい毒をはいてしまう。そんな行動ばかりしていると、いつの間にかひとりぼっちになってしまうかもしれない。そんな危機感を抱かせてくれるのがフランス映画『クロワッサンで朝食を』である。

 エストニア人のアンヌは2年の介護の末、母を看取り、その後パリで家政婦の仕事を紹介される。雇い主はパリでカフェを経営するステファン。アンヌは気持ちを切り替えるため昔から憧れだったパリへ旅立つ。しかし、彼女が担当するのは高級アパルトマンに独りで暮らす毒舌で気難しい女性、フリーダだった。フリーダは朝食にスーパーのクロワッサンを出したアンヌに激怒し追い返そうとしたり、紅茶をわざと溢して床を拭かせたりと、常にアンヌに冷たく当たり続けるのだか、彼女が自分と同じエストニア人だということを知ると、昔の自分に重ね徐々に心を開いていく。

 フリーダのもとを訪れたり、気にかけている人物はステファンただひとり。だがステファンもフリーダのワガママや毒舌に、少し呆れ始めてきていた。そんなフリーダを気にかけ、アンヌは昔のコーラスグループの友人達を家に招待するが、フリーダはまた毒舌をはきまくり、みんなそそくさと帰ってしまう。そんな頑固すぎるフリーダの振る舞いに耐えきれず何度も辞めようと決意するアンヌだったが、2人には「孤独」や「寂しさ」を感じているという共通点があった。フリーダの気持ちがわからなくもないアンヌは、頑張って向き合おうとする。

 観ているうちに「もっと他人に心を開いたり、優しくしたりすればいいのに......」と心が痛くなる。それだけリアルに感じることができるのは、本作が監督の母親の実話を基にしたストーリーだから。誰に対しても優しくするのではなく、数人でもいいから、優しくしていれば、きっとフリーダも孤独を感じることはなかっただろう。

 毒舌なおばあちゃんが、家政婦に心を開き、人生のターニングポイントを見つけ出す。そんな本作を観れば、毒舌を控えたくなり、そして今よりもっと人に優しくなれるだろう。

(文/アヤカ)

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