演じているだけ。きっとあなたもここにいる。『パレード』
- 『パレード (初回限定生産) [DVD]』
- 藤原竜也,香里奈,貫地谷しほり,林遣都,小出恵介,行定勲
- キングレコード
- >> Amazon.co.jp
- >> HMV&BOOKS
最近めっきりSNSを更新しなくなりました。Twitterでつぶやかず、Facebookに写真もあげなくなりました。なぜなのか自分自身もよく分からなかったのですが、本作にその答えがありました。
都内のマンションで共同生活をおくる四人の若者。映画配給会社に勤める直樹(藤原竜也)、大学生の良介(小出恵介)、フリーターの琴美(貫地谷しほり)、イラストレーターの卵の未来(香里奈)。特別浅くもなく深くもない、そこそこ居心地の良いグループ感で繋がれた四人の日々。そんな生活の中にある日現れたのが、誰とも面識のない謎の青年、サトル(林遣都)でした。なんとなく家に居つくことになった彼の奇妙な行動から、住人たちが抱えていた負の側面が、徐々に姿を現しはじめます。
吉田修一さんの原作と同様、本作にはホラー映画とも思えるほど、戦慄を覚えるラストが用意されています。その恐怖の核になっているのは、周りの人たちに対する「無知」ともに、自分自身のキャラクターさえも不確かになっているという「寄る辺なさ」だと思います。
TwitterやFBで上辺の部分をたくさん見せあう私たちも、本作の登場人物たちと似た状況にある気がします。数枚の選ばれた写真の中に、その人のどす黒い部分が写り込むことはありません。みんなと過ごしやすいように、自分がより魅力的に見えるように、キャラクターを選択し、それを演じる。色んな人たちと付き合っていくためには、プラスとなる事も分かっています。ですが、そこからは「演技をする自分への不信感」も同時に湧き出してはいないでしょうか。もちろん、イメージをつくる必要もないような、自分への確固とした信頼感がある人、ただのツールだと割り切っている人には関係ないのかもしれませんが。
ひょっとしたら、自分は実体のないイメージを演じているだけなんじゃないか。そんな違和感にむず痒くなっている方に観てほしい作品です。きっとこの部屋の中に、あなたもいます。
(文/伊藤匠)