『放送禁止』シリーズ全作の監督を務めている、長江俊和監督
──「洗脳」というテーマはシリーズが始まった時からやりたかった
2003年にフジテレビで放送されて以来反響を呼び、不定期に放映されていたモキュメンタリードラマ『放送禁止』。毎回ひとつの社会問題を取り上げてストーリー展開する同作品ですが、2008年と2009年には劇場版も公開するなどして、さらに人気を呼んでいます。その劇場版『放送禁止』の最新作が10月11日(土)より池袋シネマ・ロサで公開されます。監督を務めるのは、ホラー、サスペンス、バラエティ、コメディなど多岐に渡って演出をこなす長江俊和さん。今回の作品ではどんな思いでメガホンを手にとっていたのでしょうか。長江監督に直撃してきました。
10月11日から公開される映画のタイトルは『放送禁止 洗脳〜邪悪なる鉄のイメージ〜』。過去に公開された作品の中には「ストーカー」や「隣人トラブル」などニュースでもよく耳にするテーマが多かった気がします。今回のテーマは「洗脳」。あまり身近では聞き慣れない言葉ですが、このテーマを選んだ理由はなんでしょうか。
「十数年前、とある宗教団体が世間で話題になった時、ニュースなどの報道番組で『洗脳』という言葉がよく使われていました。教祖が信者を洗脳して犯罪を犯したり、ひどい時には殺人を犯したりしたんです。その事件がとても印象的で、『放送禁止』のシリーズが始まった時から『洗脳』を取り上げたかったんです。でもただ単に洗脳に掛かったストーリーにすると、ありきたりな話になりそうだったので、それを"解く"話にすることで世の中にあんまりないような作品にしました」
──専門家の先生から直々に演技のアドバイスを受けた
洗脳ってホラー映画の中だけの話のような気がするんですが、実際に存在するものなんでしょうか?
「答えから話すと洗脳は存在します。この映画は専門家の先生の話に基づいてつくっているんです。その方は、作中にも出演してくださっている認知科学者・苫米地英人先生という方なんですが、「洗脳」をテーマとして決めた時その先生の本を何冊か読ませて頂きました。また、映画に出演している女優さんに同行してもらい、苫米地先生ご本人のところにもお伺いしました。その時は、直々に演技指導というか、被洗脳者の動きや脱洗脳のテクニックについて細かく教えて頂いたのです。なので、映画の中に出てくる被洗脳者の行動とかはかなりリアルに表現しています」
──どうやって洗脳を解いていくか、被洗脳者とのやり取りに注目
リアルな動きを追求した、長江監督の拘りを垣間見ることができる今回の作品。すばり今回のみどころは?
「洗脳されている人とそれを解く人とのやり取りに注目していてください。『脱洗脳』のテーマそのままなんですが、洗脳をどうやって解いていくかが一番のポイントになります。映画ではそこまで描いていないんですが、苫米地先生の話によると、洗脳を解くためには、被洗脳者とのファーストコンタクトですべてが決まるみたいなんですよ。実際、脱洗脳者は依頼を受けたあと被洗脳者と会いにいくわけですが、初対面で目が合った瞬間で是非が決まるようなんです。つまり、そこに全精力を注ぎ込んで、関係性をつくることが脱洗脳のポイントなんだそうです」
──「真実とは何か」ということを作品を通じて伝えたい
この映画を観る際は、洗脳を解く過程に注意して観てみましょう。では、映画を通じて、監督から視聴者の皆さんに伝えたいメッセージはありますか?
「『事実と真実は違うんだ』ということを伝えたいです。事実を積み重ねることが必ずしも真実に繋がるとは限らないし、自分の目に見えていることが果たして真実とは限らない。そのへんは今回の作品の中で洗脳を解く上で重要になってくる部分でもあるので、あまり詳しいことは言えないですが(笑)。作品を通じて、『真実とは何か』っていうのを見極めるエンターテイメントを楽しんで頂けたらなと思います。洗脳が解かれた時、とてもおもしろい事実がわかります。この映画ですが、もちろん放送禁止ファンの方には観て頂きたいのですが、今回は女性が主人公ということもあって、ぜひ若い女性の方に観てもらいたいです」
今後、『放送禁止』シリーズで監督が考えているテーマはありますか?
「もし『放送禁止』の続編をやらせて頂けるのであれば、ずっとやりたいなって思っているのは警察密着もの。逮捕の瞬間の映像とかよくテレビでやっていると思うんですが、中には放送禁止になった映像もあると思うんですよ。それを取り上げて作品にしてみたいです。ちなみに、『放送禁止』シリーズ以外なら、SF映画とかはいつかはやってみたいですね。まあそれはさておき、今回の映画はかなりの力作になっています! ぜひ皆さん観てください!」
長江監督、ありがとうございました!
(取材・文/小山田滝音)
『放送禁止 洗脳〜邪悪なる鉄のイメージ〜』
10月11日(土)より池袋シネマ・ロサにて公開
監督・脚本:長江俊和
配給:ポニーキャニオン
2014/日本映画/95分
公式サイト:http://housoukinshi.ponycanyon.co.jp
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