インタビュー
映画が好きです。

VOL.56 羽住英一郎監督

「原作ファンを裏切らない自信がある」羽住英一郎監督

 人気小説家、吉田修一のサスペンス巨編「AN通信エージェント・鷹野一彦シリーズ」。主人公が心臓に爆弾を埋め込まれているというユニークな設定をはじめ、壮大なスケールで物語が描かれていることから、映像化不可能と言われたこの作品が、藤原竜也を主演に迎え、映画化されました。
 3月5日(金)より公開中の『太陽は動かない』はブルガリアでアクションシーンをはじめとする大規模ロケを敢行するなど、世界を股にかけた迫力満点のノンストップ・サスペンス作品です! メガホンを取ったのは、「海猿」シリーズや「暗殺教室」シリーズなどを手掛けてきた羽住英一郎監督。撮影の裏話や、監督の好きな映画について、羽住監督に伺ってきました。

***

----本作では、日本では絶対に不可能とも言える撮影をブルガリアで行ったそうですね。特に印象的だったことはありますか?

ブルガリアは、とにかくスケールが大きい。街並みも綺麗だったのですが、西側のヨーロッパとは違って、もともと共産圏だったということもあり、工場や団地の無骨な雰囲気や圧倒的な数と大きさは印象的でした。廃墟とまではいかなくても、いい味を出している建物もありましたね。「森は知っている」(AN通信エージェント・鷹野一彦の17歳の青春と苦悩を描いたシリーズ2作目)も入れて一本の映画にすることで、少年時代のエピソードとのコントラストを作ることができました。

__4_0S#029_222-1.jpg

――監督として新しい経験になったことはありましたか?

全体的には、今まで色々やってきたことの集大成であり、進化系でもありましたね。原作の主人公が特殊で、難しい部分ではありました。心臓に爆弾が埋め込まれているという設定と、そしてそのリアリティをどう描くかというところ。本作の主人公はほぼ成長しない、というかほぼ完成している。一般のお客さんにとって身近でなさすぎるということをどうするか、という点はアプローチの中では新しかったですね。

DSC01146.jpg

――海外でのアクションシーンはどれもスリル満点の展開となっていますが、その中で特に注目してほしいシーンはありますか?

主人公の成長期の「森は知っている」のエピソードも入っていて、途中で全く違う映画が始まったと感じるかもしれませんが、最終的に観終わった時に一つに繋がりますし、繰り返し見て楽しめる要素ではあると思います。観ている途中で作品の印象が変わることも、楽しんでいただけたら嬉しいです。映画とドラマと原作とあって、それぞれに触れるタイミングや、何を先に観るかによって感じ方が変わってくると思うので、それを楽しんでいただけたら嬉しいですね。

――原作のシーンの再現で苦労したシーンはありますか?

原作の中に「清龍瀑布」という滝があって、それをどうするかは苦労しました。原作だと、飛び込んでしまいそうに見えるという描写があるので、崖の上か吊り橋の上かをメインにしようと思っていたのですが、なかなか条件を満たす滝がなくて。結果、滝の目の前まで近づいて、そこで見ているイメージで撮影することにしました。滝のすぐそばというのは真夏なのに寒いんですよ。だけどそのおかげで二人の芝居がすごく良くなったと思います。男の子と女の子が寒さでガクガク震えそうになりながら、それでいてしっとり濡れている感じで、そんな空気感がとても良かったです。

――映画の作り手という観点から見た、藤原竜也さんと竹内涼真さんの魅力とはなんでしょうか。

竜也はプロフェッショナルというか、荒唐無稽なことを真面目にやることによって妙に説得力を持たせられる、稀有な俳優だなと。なかなか器用な俳優だと思います。竹内くんはアクションが初めてながらも、伸び代がいっぱいあって、体当たりでガッツリ頑張ってくれました。鷹野(演:藤原竜也)は一見、何を考えているか分からない、捉えどころのない主人公なのですが、一方で、相棒の田岡(演:竹内涼真)が持っている正義感や怯え、弱さを表現することによって、鷹野というキャラクターをしっかりと描くことができました。藤原・竹内のコンビは、事務所の先輩後輩でもあるので、お互いがいることによって頑張れていたと思います。この二人だったから長く激しい撮影も乗り越えられたんじゃないかなと思います。

__9_2S_043A_B239_retouch.jpg

――ここからは好きな映画についてお聞かせください! 監督は普段、映画をどのように鑑賞されますか? 監督ならではの「映画の楽しみ方」はありますか?

劇場で観る時には、絶対に予告編の始まる時間に遅刻しないようにします。予告編を見る時はいつもテンションが上がるのですが、情報として見るのとは別に、一つの作品としての予告編がすごく好きですね。自宅では、なるべく一人で、集中して観たいという感じです。

――監督が好きな映画のタイトルとその理由をお聞かせください。

ジャンルはなんでも好きといえば、好きですね。ただホラーはちょっと苦手というか、怖いので(笑)。仕事のためにホラー映画を劇場で鑑賞すると、5分くらいで後悔するんですよね。『トップガン』は大好きです。トム・クルーズがビーチバレーをしてバイクで女教官の家に行くシーン。ビーチバレーのシーンは夕日が傾いていて、そのあとのバイクに乗っているシーンも夕方で、その後教官の家が長いデイシーンなんですよね。自分の映画でも、かっこよければその後が夜のシーンじゃなくても夕陽を狙って撮っていいんだって思いましたね(笑)。

――作品を映画館で見ることの魅力とはなんでしょうか。

やっぱり、音が一番の魅力です。また、強制的に暗闇で集中して観ることは、すごくいいです。大きいスクリーンでいい音で観るっていうのが一番ですよね。劇場は、映画を体感するために行く。劇場という選択肢があるなら映画館で見たいです。

――最後に、本作を楽しみにしている映画ファンへメッセージをお願いします。

この映画は、原作やドラマ版もありますが、アクション満載で映画単体でも楽しめると思います。原作を読んだ人、ドラマ版を観た人は尚更、どうやって実写の映像になっているのかという観点からも、観て欲しいです。そこも裏切らない自信があるので。

――羽住監督、ありがとうございました!

(取材・文/トキエス)

***

____0S#011_350_fix_0304.jpg

『太陽は動かない』
3月5日(金)公開

監督:羽住英一郎
原作:吉田修一「太陽は動かない」「森は知っている」(幻冬舎文庫)
脚本:林民夫
出演:藤原竜也 竹内涼真 ハン・ヒョジュ ピョン・ヨハン / 市原隼人 南沙良 日向亘 加藤清史郎 八木アリサ/ 勝野洋 宮崎美子 鶴見辰吾 / 佐藤浩市
配給:ワーナー・ブラザース映画

2021/日本映画/110分
公式サイト:taiyomovie.jp
©吉田修一/幻冬舎 ©2020「太陽は動かない」製作委員会

« 前の記事「映画が好きです。」記事一覧次の記事 »

羽住英一郎(はすみ・えいいちろう)

2004年『海猿』で劇場映画監督デビュー。以降、数々の話題作、ヒット作を手掛ける。主な監督作品に『BRAVE HEARTS海猿』(2012)、『暗殺教室』(2015)、『OVER DRIVE』(2018年)等がある。

BOOKSTAND 映画部!

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム