第37回 『ジュラシック・アマゾネス』
『ジュラシック・アマゾネス』
原題『DINOSAUR ISLAND』
1994年・アメリカ(日本劇場未公開)・90分
監督/フレッド・オーレン・レイ、ジム・ウィノースキー
出演/ロス・ハーゲン、ミシェル・バウアー、トニー・ネープルスほか
世界的大ヒットの『ジュラシック・ワールド』。1993年の第1作『ジュラシック・パーク』(以後『JP』)から22年、今の子供達は当たり前のようにリアルなCG恐竜を目にしているが、当時は「まるで生きているようだ!」と誰もが感嘆する革新的な作品だった。そしてヒット作には必ず真似する輩が出てくる。『JP』製作の噂に素早く反応した「B級映画の帝王」ロジャー・コーマンは、遺伝子操作恐竜が暴れる『恐竜カルノザウルス』(もちろんCGなし)を、製作日数18日というムチャな日程で『JP』よりも先に公開した。
環境破壊の元凶である人類を滅亡させようと企てるオバサン科学者が、ニワトリのDNAで小型恐竜を作り、その恐竜の卵を食った女達が次々と恐竜を産んでいくという狂った内容。ラスボスは短足のメタボなティラノサウルスで、アナログな機械仕掛けの実物大恐竜だ。コーマンはこれを3作までシリーズ化し、予算削減のため恐竜をボロボロになるまで使い回した。だが今回紹介するのはこの作品ではなく、そのティラノが流用された別枠の1本。ある意味それは『カルノザウルス』以上に狂った内容で、「巨乳」に「恐竜」という男の妄想を2つ一緒に盛り込んだ欲張りな作品だった。
監督はアメリカZ級映画の屋台骨を支える2名による共同演出。本コラム第26回で紹介した『首狩り農場 地獄の大豊作』のフレッド・オーレン・レイと、『ダイハード・ビクセン 地獄の巨乳戦士』などコーマン門下のジム・ウィノースキー。彼らの作風を知るマニアさんは、その内容を推して知るべし(笑)。
太平洋上空、軍事裁判所へ3人の若い脱走兵を護送中の米軍機。主犯格のチャラ男・スキーマー、黒縁メガネの秀才・キンケイド、ハゲでデブで童貞のターボ。責任者は軍隊生活23年のブリッグス大尉。機体が突然故障し海面に不時着、計6人の兵士はゴムボートで海図に載っていない孤島に上陸する。しかし、その島は女だけの部族アマゾネスが住み、前世紀の恐竜が闊歩するロストワールドだった。彼女らは全員がプレイメイト並みのルックスで、腰巻の下はTバック。兵士達が「非常食よりいい」と喜ぶのも当然。
だが、パイロットは頭でっかちのブサイクな恐竜(手を入れて動かすパペット)に飲み込まれ、年長者の軍曹はトリケラトプス(ストップモーションアニメ)に角で突かれ即死。残ったブリッグス大尉と3人の脱走兵だが、チャラ男の腕にあるスマイリーフェイス(黄色のニコニコマーク)のタトゥーが偶然、島の神と同じデザインだった(そんなバカな)ため、彼らは「グレートワン」と呼ばれるティラノサウルスを倒す救世主と崇められる。部族では年に1度、ティラノの生贄に部族の女を差し出すしきたりがあったのだ。
ティラノにビビる3人の若者達だが、ちゃっかり部族の娘達と仲良くなり、彼女らにエロ本を「聖なる巻物」と言い包め、興味を持たせてセックスに及ぶ。ある日、傷口に湧き水を掛けると怪我が完治したことから、島の水に不老長寿の効能があることが判明。恐竜が滅びないでいる理由もそこで、アマゾネスも数千年間若いままで、生殖せずに女だけで生き延びてきたのだ。つまり兵士達は数千歳の処女を破ったことになる(苦笑)。
やがてヨソ者を疎んじていた女王も「グレートワンを退治したら3人の結婚を認める」と譲歩し、ついに兵士達はティラノと対決する。内部メカで頭と手だけが動き、歩かない(歩けない)ヌボーッと突っ立ったティラノに兵士達は一斉射撃を浴びせ、最後はターボが手榴弾を口の中に放り込む。頭ドッカーン! 首なしティラノがドドッと横倒しに。役立たずだったハゲデブが、童貞捨てて自信を付けたのか、最後に美味しいところをかっさらう意外な決着。翌日、チャラ男は姫と結婚式を挙げ、大尉も「軍事裁判は免除だ」。そこへ女王が「あんた、ここで王にならない?」。これを受ける大尉。めでたし、めでたし。
ドヘタなストップモーションアニメでカクカク動く翼竜、緑色のアパトサウルス、葉っぱ状の体にナメクジのような目が付いた変な昆虫(トリケラトプスだけ動きがちょっとよい)。機械仕掛けで前後に動くだけの羽毛恐竜風の怪物に実物大のティラノサウルス。そして美女のオッパイとお尻。マニアには堪らない作品だ。ちなみにDVDジャケットには、「本作品を一般の人々がご購入・ご覧になられますと激しい怒りを感じてしまう事があるかもしれません。あらかじめ慎重にご検討下さいますようお願い申し上げます」と注意書きが(汗)。きっとバカ映画を楽しめない無粋なお方がいるのでしょう......というか、俺ら「一般人」にあらず(笑)?