連載
怪獣酋長・天野ミチヒロの「幻の映画を観た!怪獣怪人大集合」

第35回 追悼、クリストファー・リー

『スターシップ・インベーション』
原題『STARSHIP INVASION(ALIEN ENCOUNTER)』
1977年・カナダ・87分
監督:エド・ハント
出演:クリストファー・リー、ロバート・ヴォーン、ダニエル・バイロンほか

 今年6月7日、ドラキュラ役者として有名なクリストファー・リーが逝去した(満93歳)。近年では、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのサルマンや、『スター・ウォーズ』シリーズのドゥークー伯爵でお馴染みの超ベテラン俳優だ。

 世界初のドラキュラ映画『魔人ドラキュラ』(31年、主演ベラ・ルゴシ)をハマー・フィルムがカラーリメイクした『吸血鬼ドラキュラ』(57年)。ハマーは前年の『フランケンシュタインの逆襲』で、台詞はなくメイクで素顔も見えない人造人間を演じたスタントマン上がりの無名俳優をドラキュラ役に抜擢。それがクリストファー・リーだった。作品は傑作に仕上がり、世界中で大ヒットを記録してシリーズ化。リーは、美女の生き血を吸う際の血走った双眸とカッと剥き出した牙で、観客を恐怖のどん底に陥れた。

 イタリア貴族の血をひくロンドン出身の都会人がもつ品格。193センチの長身ながらその動きはスローモーにあらず、剣術・馬術に秀でた身のこなしは颯爽として優雅。リーはドラキュラ伯爵として最高級の素材だったのだ。これで大ブレイクしたリーは7か国語を操り欧米各国の映画に出まくり、出演作250本は世界最多映画出演としてギネスに認定された。また従兄は『007』シリーズの原作者イアン・フレミングで、リーは『007 黄金銃を持つ男』(74年)に敵役の殺し屋スカラマンガとして出演を果たしている。

 さてドラキュラの宿敵ヴァン・ヘルシング教授ことピーター・カッシングも、リーと並ぶ怪奇俳優のカリスマだが、1977年に『スター・ウォーズ』でモフ・ターキン総督役としてキャリアアップした。一方リーも同年、新機軸の宇宙人役で2本出演していたのだが、どちらも日本では劇場未公開の低予算映画。日本で辛うじてビデオ化されたのは、リーのネームバリューのお蔭。今回は追悼を込めて豪華2本立て! 両作品とも紹介しようではないか。

 まずはカナダ映画『スターシップ・インベーション』。日本では1978年、『スター・ウォーズ』の日本公開に便乗して、高島忠夫の解説も楽しみだった「ゴールデン洋画劇場」(フジテレビ)で『未来からの挑戦! 第四次宇宙戦争』という、内容とは全く無関係な邦題でテレビ放映された。

 滅亡の危機に瀕するアルファ星から、移住先を求めて地球に飛来するラムセス司令官(クリストファー・リー)。胸にドラゴンのイラストが入った黒タイツを穿いた恥ずかしい姿のリー(ビデオジャケット参照)に、もはやドラキュラ伯爵の威厳はない。さらに会話は全てテレパシーなので、口を1度も開かない元ドラキュラ(苦笑)。

 ラムセスは、オーバーオールを着た農夫(UFOモノのお約束)を拉致し、部下の女宇宙人とセックスさせたり、人妻を浚って下着姿にして(これがエロイ)体液を抜いたりする。その検査結果から結論を出すラムセス。「男の精液から我々は地球人の子孫ということが証明されたが、生き延びるためには血族でも皆殺しだ」。だが地球には「宇宙同盟」という数種の宇宙人による混成組織が、数千年前から海底にピラミッド型の基地を建て地球の平和を勝手に守っていた(エジプトのピラミッドも彼らが造った!)。

 ラムセスは科学調査と偽り、海底基地の乗っ取り工作を行う。ここで溶接工マスクみたいな四角い穴が目の部分に開いて、口がキツツキのように尖っている変テコなアンドロイドが登場。プレイルームと呼ばれる部屋にラムセスを案内するのだが、そこには売春宿の出番待ちみたいにセクシー美女がズラリと座っていて、従業員や訪問客は気に入った娘と遊べるのだ(え~?)。お気に入り女性の体を穴の開くほど見つめ、透視だか妄想だかで全裸にするラムセス。何? このシーン(ビデオジャケット参照)。

 さてラムセスに海底基地を奪われた同盟は、UFOもアンドロイドも攻撃を受けて故障。同盟は矢追純一に該当するUFO研究家のダンカン教授と、コンピューター技師をUFO内に連れ込み修理をさせる。ここが勝機とラムセス、UFOから「殺人光線」と呼ぶものを地球に向けて発射すると、各地で無差別乱射事件やピストル自殺が次々と発生。今までダンカン教授の宇宙人来訪説を無視してきた米軍は緊急会議を開き、UFOについて「共産圏の監視は万全だから、地球の飛行物体じゃない」とマヌケ丸出しで慌て出す。

 修理が終わった同盟のUFOは再びアルファ星UFOと交戦するが、敵の遠隔操作でまたもコンピューターを壊される。急場しのぎで電卓を取り出し計算する地球人技師(笑)。基地のコンピューターもラムセスの部下に制圧され、同盟軍は絶体絶命! だがここでアンドロイドが再起動し、コンピュータールームにいる敵を倒す。さらにそのコンピューターで殺人光線を発射していたUFOを消滅させ、ラムセス側のUFOが互いに衝突するプログラムを瞬時に組み(すごいじゃん! アンドロイド)、一気に形勢逆転! ラムセスは任務失敗を悟り、月に激突して自爆。小規模なスター・ウォーズは終戦する。

 お次は米国B級映画の帝王チャールズ・バンド製作による『エンド・オブ・ザ・ワールド 死を呼ぶエイリアン脱出計画』。あんなに十字架が苦手だったリーが、今回は神父役とその神父に化けた宇宙人の一人二役だ。

 NASAに勤めるボラン教授は、宇宙から発信される「地球大崩壊」という怪電波をキャッチする。すると世界各地で火山が噴火し、溶岩流や有毒ガスで何十万人も死ぬ。ボラン教授は車に電波探知機を搭載し、ちょいちょい奥さんとセックスしながら怪電波の受信先を捜索。奥さん役は、キューブリック監督『ロリータ』(62年)のスー・リオンだ。

 さてボラン教授が突き止めた場所は修道院だった。そこには同じ顔をした2人の神父(リー)がいて、黒い法衣のリーは、本物の神父である白い法衣のリーの姿を借りた宇宙人だ。彼らは、宇宙に汚染を広げるハタ迷惑な星・地球(PM2.5や黄砂を撒き散らす某国みたいなもの?)を破壊するため、数千万光年の彼方から地球にタイムワープし、修道院の地下に基地を作り世界各地の火山を進んだ科学力で人工的に噴火させていたのだ。

 ラストは宇宙人達の地球脱出が始まる。次々とワープ装置で母星へ帰還していくシスター達。最後に黒リーが入り、「君達は優秀だから一緒に来ないか?」と夫妻を誘う。と言った途端「ビヨ~ン」という効果音と共に黒リーの顔がツルツル頭でギョロ目のエイリアンに(ビデオジャケット参照)! 夫妻は「う~ん、どうしよう......」と迷うが、基地の監視モニターに映る各国の壊滅状況を見て、地球を見捨ててさっさと2人一緒にワープ(笑)。誰もいなくなった地下室、続けて宇宙から見た地球の姿が映し出されたと思うと、突然パッカ~ンとスイカのように割れて大爆発する地球。(高島忠夫調で)いかがでした?

――クリストファー・リーさんのご冥福をお祈りいたします。

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『エンド・オブ・ザ・ワールド 死を呼ぶエイリアン脱出計画』
原題『END OF THE WORLD』
1977年・米・88分
監督:ジョン・ヘイズ
出演:クリストファー・リー、カーク・スコット、スー・リオンほか

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天野ミチヒロ

1960年東京出身。UMA(未確認生物)研究家。キングギドラやガラモンなどをこよなく愛す昭和怪獣マニア。趣味は、怪獣フィギュアと絶滅映像作品の収集。総合格闘技道場「ファイトネス」所属。著書に『放送禁止映像大全』(文春文庫)、『未確認生物学!』(メディアファクトリー)、『本当にいる世界の未知生物(UMA)案内』(笠倉出版)など。
世界の不思議やびっくりニュースを配信するWEBサイト『TOCANA(トカナ)』で封印映画コラムを連載中!

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