NHK杯戦 注目のキャスター対決

左/中村太地六段、右/山崎隆之八段 撮影:河井邦彦
第67回NHK杯戦1回戦 第16局では、山崎隆之(やまさき・たかゆき)八段と、中村太地(なかむら・たいち)六段の『NHK 将棋フォーカス』キャスター対決となった。注目の一戦の序盤を、内田晶さんの観戦記からお伝えする。



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■屈指の好カード

将棋フォーカスのキャスターを務める山崎と中村が、いきなり1回戦で激突した。抽選の妙とはよく言ったもので、今期の目玉カードのひとつとなった。フォーカスで司会を務める乃木坂46の伊藤かりんさんも取材に訪れて、決勝戦のような華やかさである。解説も5月から日本将棋連盟の専務理事に就任した森内俊之九段と実に豪華だ。
注目の振り駒は、と金が3枚出て中村の先手番に決まる。無表情の中村に対して、山崎は天を仰ぐ仕草(しぐさ)を見せる。理由はかりんさんの記事をご覧ください(10月7日15:00更新)。


■下地となった前例

山崎も中村も和服を身にまとっている。棋士の和服は本気の証し。抱負を聞くと、両者ともに「見てくださるファンの方が面白いと思えるような将棋にしたい」と本局の意気込みを語る。決してコメントを申し合わせたわけではない。
両者は本局が公式戦での初手合いとなるが、過去に2度対戦している。1度目は昨年の新春特番の10分切れ負け対局。先手番の中村が角換わりで完勝した。
2度目の対戦は昨年の夏、山崎の強さと速さが際立つ「フォーカス杯 1分切れ負け将棋」。中村が飛車をタダで取られてしまい、苦笑いを浮かべた将棋といえば、ご記憶の方も多いことだろう。もちろん結果は山崎の圧勝に終わった。
本局は先後の違いはあっても、その将棋がベースになっている。中村は「あの将棋は飛車をタダで取られたのがすべてですが、作戦負けになってしまったのも反省です。それを意識しすぎて序盤で神経を遣いすぎてしまいました」と振り返る。
山崎は2手目に△3二金と上がった。昔は挑発的な意味合いがあった手だが、最近では飛車先の歩を保留するために上がることが多い。山崎は「1分切れ負けは早めに飛車先の歩を伸ばしていったのが、桂の活用をなくしてしまい作戦を狭めてしまいました。本譜は無理攻めだと思いますが、方針ですから」と果敢に打って出る。

※投了までの記譜と観戦記はテキストに掲載しています。
■『NHK将棋講座』2017年9月号より

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