開幕戦にふさわしい好カード——―王銘琬九段と本木克弥八段の激闘

左/王 銘琬九段、右/本木克弥八段  撮影:小松士郎
第65回NHK杯本戦がスタートした。1回戦第1局は、王 銘琬(おう・めいえん)九段と、本木克弥(もとき・かつや)八段の対局となった。高見亮子さんの観戦記から、序盤の攻防を紹介する。
※本木八段は本対局後の4月7日付で昇段したため、本文は七段で表記

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■互いに最強手。激闘の連続

第64回では、井山裕太棋聖が、唯一手にしていなかったNHK杯を抱いた。新年度は、この第一人者が連覇の道を歩み始めるのか、並み居る強豪先輩棋士たちが意地を見せるのか、期待の若手陣が躍進するのか…どの筋書きにもワクワクさせられる。第65回の初戦は、王銘琬九段対本木克弥七段。解説の片岡聡九段の言う「開幕戦にふさわしい好カード」となった。
55歳の王は、人柄も棋風も朗らかで若々しい。中央を志向する独自の「メイエンワールド」に誘い入れれば特別な強さを発揮する。
21歳の本木は、片岡九段が「もともと強かったが、ここ1、2年でさらに力をつけてきた。戦いが強く、読みが深い」と語るホープ。今期(第72期)の本因坊戦リーグでは、挑戦者争いの単独トップを走っている(4月1日現在)。自信も備わり、落ち着いた風情をたたえている。
「激戦は必至」と片岡九段が予想して、注目の一番が始まった。

 


王銘琬九段が黒番。黒9まで、位を高く布陣を進めた。黒13の肩ツキに白14の受けなら利かしと見て手抜き。黒15まで、片岡聡九段は「銘琬さんならではの石運び」と推移を見守った。
本木克弥七段が白16と下辺に連打したのは「早碁の気合い」と片岡九段。王も黒17と右辺に連打して、攻めがスタートした。片岡九段は「銘琬さんには、攻めているかぎり必ずいいことがあるという信念がある」と明かした。
白22は、Aの弱点を緩和している。1図の黒1から7には、白8が黒の形を崩す手。△が働き、黒aとオサえられないためだ。白26まで脱出したとき、「黒の次の手が難しい」と片岡九段は言い、BかCか「気合いを入れて」Dかと予想したが、黒27はさらに気合いの入った手だった。2図の白1が心配だが、黒8に続いて白aには黒bでよく、今すぐは白が無理。黒は攻めの姿勢を主張しているが、ここで白は手を抜いた。

白28の打ち込みに「度胸がいい」と片岡九段は感心した。黒は29に迫り、白36まで頭を出したところで黒37と上辺に先着。「なかなかよさそうな手」(片岡九段)で、黒攻勢に見えた。
※投了までの棋譜と観戦記はテキストに掲載しています。
■『NHK囲碁講座』2017年6月号より

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