生の野菜より優れた健康効果──漬物の乳酸菌が生み出すGABAとは

撮影:安井真喜子
乳酸菌は腸の善玉菌を活性化させますが、漬物の乳酸菌はヨーグルトの乳酸菌とは違う種類なので、腸に違う刺激を与えることができます。また、漬物の乳酸菌が生み出すGABA(ギャバ)という成分には、脳をリラックスさせ、眠りを誘う働きがあることがわかってきました。よく眠れないという悩みを持つ現代人は多いものです。いま一度、漬物の健康効果を見直してみてはいかがでしょうか。

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■漬物の乳酸菌が生み出すGABAでリラックス

最近は、野菜はサラダでとれるから、または塩分が高いからと、漬物をあまり食べない人が増えているようです。けれども、漬物には生の野菜よりも優れた健康効果があります。
まず、微生物がつくり出したビタミンB群が豊富にとれることです。水分が抜けてカサが減る分、食物繊維の割合も多くなります。そのため、便秘予防、腸内環境の改善、高血糖、コレステロール値の上昇抑制作用も期待できます。さらに、咀しゃくには脳を刺激する働きがあるので、たくあんなどをよくかんで食べることは、脳にもよさそうです。
意外に思われるかもしれませんが、漬物には眠りを誘う効果も知られています。その秘密は、漬物に含まれる乳酸菌が生み出すGABA(γ ‒アミノ酪酸)と呼ばれる成分にあります。
「GABAはアミノ酸の一種で、脳の興奮状態を鎮めてリラックスさせる働きをする脳内神経伝達物質です。体の深部体温を下げて睡眠に入りやすくしてくれるといわれます。ただし、GABAの効果は長く続かないので、安眠のためには夕食に食べるのがよいでしょう」(小林弘幸先生)

■ほかにもあるGABAのうれしい効果

GABAは快眠効果だけでなく、ストレス軽減効果、免疫力増進作用も期待されています。降圧作用もあり、特定保健用食品にも使用されているほどです。
「GABAを投与したラットでは、学習効果が上昇するという実験結果も報告されています。さらに、GABAを投与すると脳内たんぱく質の合成速度が速くなることが、これも動物実験で確認されています。脳機能に何らかの影響を与えている可能性が考えられます」(小林弘幸先生)
GABAは、肉や魚、野菜、果物、そして漬物などさまざまな食品に含まれています。日本の漬物に限らず、キムチやザワークラウトにもGABAは豊富です。
「私はザワークラウトが好きですね。とてもすっぱいのですが、肉料理によく合うので、一緒にとるのがおすすめです」(小林暁子先生)

■発酵漬物で手軽に腸内環境の改善を

「ところで、よい睡眠を得るには腸内環境をよくして自律神経のバランスを整えることがとても大事です。漬物は、乳酸菌と一緒に食物繊維もとれ、腸内の善玉菌を活性化するのにいいですね。また、発酵食品は多品種を組み合わせてとることが腸内環境の改善に効果的です。漬物の植物性乳酸菌は日本人の腸にも合うともいわれています。毎日の食卓に1品漬物を加えてみてはいかがでしょうか」(小林弘幸先生)
■『NHK趣味どきっ! きょうから発酵ライフ 〜体の真ん中から健・幸・美〜』より

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