可憐なつぼみで冬を彩るスキミア

スキミアの花。撮影:田中雅也
房状についた赤から白、緑色などの丸い蕾がかわいらしいスキミア。花の少ない冬の間も彩りを与えてくれるので、女性を中心に人気が高まっています。そんなスキミアの基本の育て方と魅力を、園芸家の伊藤章太郎(いとう・しょうたろう)さんに教えていただきました。

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■スキミアとは?

一般的にスキミアと呼ばれる植物は、学名のスキミア・ヤポニカ(Skimmia japonica )とあるとおり、関東地方以南の暖地を中心に日本に自生しているミヤマシキミ(深山樒)です。ミカン科の常緑低木で、光沢のあるやや肉厚の葉をもち、日陰から半日陰を好みます。雌雄異株で、雄株と雌株があります。
2010年代に入ってから、かわいらしい蕾をもつ苗や鉢物として秋から冬にかけてしばしば見かけるようになりましたが、じつはそれらの多くはミヤマシキミが欧州に渡って品種改良され、日本に“戻ってきた”園芸品種です。

■原産地の日本より欧州でよく知られている

ミヤマシキミは、センリョウやマンリョウと同じように赤い果実をつけるため縁起物として扱われていたためか、庭園やお寺の境内などで植栽されてきました。しかし、日本では一般の認知度はあまり高くありません。
一方、欧州では古くは18世紀に、ドイツ人医師であり植物学者でもあったシーボルトと、同じくドイツ人植物学者・ツッカリーニが日本の樹木を取りまとめ記した『フローラ・ヤポニカ(日本植物誌)』にミヤマシキミが取り上げられています。また、イングリッシュガーデンに憧れている人で知らない人はいないであろう英国のウィズリーガーデンにも植栽されているように、ミヤマシキミ(スキミア)は欧州ではよく知られた植物でした。

■秋から冬は蕾を春には花も楽しめる

欧州で品種改良され“戻ってきた”スキミアは、花もさることながら小さな蕾が集まった姿も魅力的です。蕾にも色がつき、赤いものや白いもの、深い赤など品種によりさまざまです。蕾は10月中旬ごろから開花までの約半年もの間、楽しむことができます。彩りの少ない真冬の時期に楽しめる数少ない花材です。また3月下旬ごろから5月ごろまでは、蕾に続き花も楽しむことができます。
庭植えでも5年で1mほどの高さにしかならず、ほかの常緑樹に比べ生育ははるかにゆっくりなため、庭はもちろんのこと、ベランダなど狭い空間でも栽培ができるのも魅力の一つです。
■『NHK趣味の園芸』2016年12月号より

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