佐藤天彦名人、棋士人生の中盤戦の戦い方を考える

撮影/藤田浩司
テキスト『NHK 将棋講座』では、佐藤天彦(さとう・あまひこ)名人が講座「天彦流 中盤の読みとき方」の講師を務めています。今年10月でプロデビューから10年を迎えた佐藤名人は棋士人生も中盤にさしかかったと考えています。

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将棋はしばしば人生に例えられます。始めがあって終わりがあるという意味では、確かに人間の一生と似ています。この講座では中盤戦の勉強をしていますが、ちょうど私の棋士人生も中盤にさしかかっていると言えるかもしれません。
私がプロデビューしたのは2006年の10月。ちょうど10年が過ぎました。

■序盤戦の基礎作りが生きた

棋士人生の序盤戦、つまり若手棋士のときはプロとして土台となる知識や技術を培わなければいけませんし、私もかなり意識して勉強してきました。同時に公式戦で結果を出すことも必要で、そのためには最新形の研究など、より実用的な勉強が必要になります。
難しいのは、前者と後者の勉強法は少し違った意味合いがあり、なかなか折り合わないこと。流行形ばかり研究していても根本的な実力になるかどうか難しい。また土台作りの勉強ばかりしていると、最新形で対抗できなくなることがあります。私の場合は種まきというか、土台作りに力を入れていたので、なかなか結果が出なくて苦労しました。そのまま勝てずに終わってもおかしくはありませんでしたが、名人になることができました。
棋士人生の序盤戦はうまく切り抜けられたので、長い中盤戦をどう戦うか。

■これからも一つ一つのことを大切に

名人として、将棋の内容や立ち居振る舞いが注目されるのは間違いありません。責任が求められる立場ですが、同時に結果も出さなくてはいけない。バランスが難しくてどう乗り越えるかですが、これまでのように目の前のことを一つ一つ丁寧にやっていくしかないと思っています。自分の素直な気持ちとして、名人として活躍して、ファンに喜んでいただきたいと強く思っています。
ありがたいことに取材の依頼などが多く、以前よりも忙しい日々を送っています。研究の時間は減っていても、土台の力があればそう簡単に力は落ちないはず。これから問われるところですが、序盤戦で培った基礎力を生かして結果を出したいですね。
■『NHK将棋講座』2016年12月号より

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