藤井秀哉七段VS.一力遼七段、敢闘賞ものの激戦

左/藤井秀哉七段、右/一力遼七段 撮影:小松士郎
第64回NHK杯2回戦第1局は、本戦出場4回目の藤井秀哉(ふじい・しゅうや)七段(黒)と、昨年準優勝の一力遼(いちりき・りょう)七段(白)の対局だった。江﨑民二さんの観戦記から、序盤の展開を紹介する。

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■敢闘賞ものの激戦

いよいよシード組が登場する2回戦第1局を迎えた。シード組のトップバッターは一力遼七段。棋聖戦リーグ入りを果たして七段に昇段し、初出場の第62回NHK杯戦で準優勝した。すでに恐るべき強豪である。その棋風について、解説の石田秀芳二十四世本因坊は、「力が強いだけでなく、バランス感覚も優れている」と評した。
一方の藤井秀哉七段は、1回戦で鶴山淳志七段を破って2回戦に進出している。このときの解説がくしくも今回の解説者である本因坊秀芳だった。「不思議な力強さがあります。明治・大正期に活躍した二十一世本因坊秀哉(しゅうさい)名人を彷彿(ほうふつ)させる棋風で、受けの力が強いという印象です」と、読みは違うが藤井と同名の秀哉名人になぞらえてその棋風を紹介した。
力強さは両者とも定評があるが、棋風の差が興味深い。果たして、「敢闘賞があればあげたい碁」と本因坊秀芳に言わしめた激闘が繰り広げられた。

■総ガカリの布石

四隅に小目が打たれて珍しい布石となった。右下への黒5のカカリから総ガカリの展開。これは、黒が5手目に右下へカカった以上当然の展開と石田秀芳二十四世本因坊が解説する。

すなわち、このあと黒が1図、黒aに打つと右辺に黒の好形が出現する。それを阻止して白がaにカカる。すると今度は左上bが白の好点となるので黒がそれを阻止する。さらに左下黒cのシマリが好点となるので、白がそれを阻止するというわけである。
なお、黒5で右上を1図、黒aとシマると、白は右下△とシマり、さらに黒が左下cとシマり、白が左上bとシマると「総ジマリ」となる。黒はコミの負担があるので総ジマリを避けて「総ガカリ」となったわけである。

黒11のコスミツケに白14と立てば普通で、黒がAの一間トビ、白Bの二間ビラキとなる。
一力は白12と積極的に仕掛け、左下から激闘が始まった。黒13で14のハネ出しはない。白が13と切ったとき黒Cからのシチョウは黒よしだが、右上隅へのシチョウアタリが厳しい。黒17のハネに白は18の切りを入れて黒三子へのアタリを担保に白の生きを確かめた。
※投了までの記譜と観戦記はテキストに掲載しています。
■『NHK囲碁講座』2016年10月号より

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