トップ棋士たちの競演──東西対抗フットサル大会に潜入

関東チームの佐藤和俊六段。パワフルなシュートを何度も放った。撮影:藤田浩司
棋士たちの間でフットサルがブームになっている。聞くところによると某日、東西のトップ棋士たちがチームを作り対抗戦を行うらしい。日ごろ知力の限りを尽くして戦う棋士たちのフットサルは、どんなゲームになるのか。勝敗は、フットサル3試合+3分切れ負け将棋3局の合計勝ち点で決着する。はたして試合会場では、想像をはるかに超えて熱く激しい戦いが繰り広げられた──。

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■コートに盤上に棋士が躍動!

6月、棋士総会が行われた日の夜、渡辺明竜王の発案による「東西対抗フットサル大会」が開催された。試合は動画中継サイト「ニコニコ生放送」で中継され、約5万人もの視聴者がリアルタイムで見守る大会となった。
大きな注目を集めた理由は、なんといっても参加棋士たちの顔ぶれにある。渡辺明竜王と佐藤天彦名人をはじめとして、深浦康市九段、広瀬章人八段、稲葉陽八段といったA級に在籍しているトップ棋士、NHK将棋フォーカスでもおなじみの村山慈明NHK杯、中村太地六段、渡部愛女流初段など、東西合わせて総勢25名が参加したお祭りとなった。
開会式で渡辺竜王の選手宣誓が終わると、いよいよ試合開始。注目の第1試合は、佐々木大地四段と西川和宏五段の両キーパーのセービングが光る展開となり、無得点での引き分け。両チームとも攻守の切り替えが早く、棋士たちの機敏な動きに「思ったよりもみんなうまい」、「ちゃんとフットサルをしている!」など視聴者からは驚きのコメントが相次いでいた。
試合が動いたのは第2試合。的確なカウンターで攻め続けた関西チームが、星野良生四段の左サイドからのシュートで得点。第3試合でも高浜愛子女流2級が得点し、関西チームが3試合を2勝1分で勝ち越した。フットサルで劣勢となった関東チームは、ハーフタイムに行われた3分切れ負け将棋で2勝1敗と巻き返したが、トータル成績では関西チームが3勝2敗1分けでリード。関西チームの優勝…と思いきや、渡辺竜王からの提案により、広瀬八段対稲葉八段による3分切れ負け対局が追加された。しかしこれを稲葉八段が勝利。関西チームが完全勝利を収め、大会の幕を閉じた。
盤上とフットサルコートで繰り広げられた、身体と頭脳を生かした真剣勝負。参加した棋士たちが口々に「楽しかった」と満足気だったのが印象的だ。ふだんとは違う棋士たちの姿に、また新しい魅力を感じた将棋ファンも多くいたことだろう。
■『NHK将棋講座』2016年9月号より

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