超有名フレーズ「見えざる手」のルーツは、アダム・スミスじゃなかった? 気鋭のエコノミストが解き明かす経済学の新バイブル
- 『善と悪の経済学』
- トーマス・セドラチェク
- 東洋経済新報社
- 3,672円(税込)
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世界15カ国語に翻訳されているベストセラー『善と悪の経済学』。チェコ共和国で刊行されるや否やたちまち話題沸騰となり、各国で衝撃作として注目され絶賛された結果、2012年にはドイツのフルランクフルト・ブックフェアで見事、ベスト経済書賞に輝いた作品です。
著者のトーマス・セドラチェク氏は1977年生まれ。なんと大学在学中の24歳の時に、チェコ共和国の初代大統領の経済アドバイザーとなった異才。今や同国を代表する経済学者であり、若手論客として名を馳せている人物です。
経済学は、哲学・宗教とは切っても切り離せないと主張するセドラチェク氏は、同書で、世界初の長編物語であるメソポタミアのギルガメシュ叙事詩にはじまり、旧約聖書から、プラトン、アリストテレス、デカルト、マンデヴィル、スミス、ケインズ、アニマルスピリット...など数多の古典から、現代経済学のあるべき視座を見出すとともに、経済史の意外な事実を明らかにしています。
たとえば、「近代経済学の父」として知られる経済学者、アダム・スミス。『国富論』を著し、あの超有名フレーズ「見えざる手」でおなじみですが、このフレーズは、市場において各個人が自己の利益追求を目的に働いているにも関わらず、社会的分業が成り立つという調整機能のことを、まるで市場の見えざる手に誘導されて、社会はうまく回っている、と表現した言葉としてよく知られています。
ところが同書によれば、この「見えざる手」の概念は、実はアダム・スミスではなく、スミスより少し前の世代に活躍したイギリスの思想家、バーナード・マンデヴィルがルーツ。
マンデヴィルは著作『蜂の寓話』で、一般的には「悪徳」とみなされてしまう個人の利益追求が、結果的に社会全体に利益をもたらすという主張を謳っていますが、この「悪徳こそが経済成長の源」であるというマンデヴィルの主張こそが、スミスの「見えざる手」につながる経済思想なのだとか。
経済学の意外な真実をはじめ、歴史、哲学、心理学、古代神話に造詣の深い著者が解き明かす、5000年にも及ぶ知の境界線の旅をつづった同書は、21世紀の経済学の進むべき道を示すバイブルとして、必読の1冊と言えるでしょう。