若手キラーと若手有望株の戦い

左/平藤眞吾七段、右/斎藤慎太郎六段 撮影:河井邦彦
第66回NHK杯戦も本戦がスタートした。1回戦第3局は“若手キラー”こと平藤眞吾(ひらふじ・しんご)七段(先手)と、初出場の斎藤慎太郎(さいとう・しんたろう)六段(後手)の対局となった。森充弘さんの観戦記から、序盤の展開を紹介する。

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■駆け引き

「横歩取りは後手のほうが有利と思うてるから」と語る平藤。「僕もそう思います」と斎藤。
これは対局後に交わされた会話だが、まさに棋は対話なり。平藤の▲1六歩〜▲9六歩は、「振り飛車にするかもしれないけれど、横歩取りになるのなら先に横歩を取ってよ」の意思。一手損をして横歩取りの後手番の形にしようという狙いだ。

斎藤の△5二玉(2図)は、「こちらが後手なのだから、そちらこそ先に横歩を取ってくださいね」という気持ち。もちろん平藤は横歩は取らない。


■ 若手キラーと若手有望株

本局の解説は、斎藤の師匠であり、平藤とは関西研修会幹事を一緒に務めていたことがある畠山鎮七段。畠山は関西奨励会幹事のときに多くの奨励会員を指導してきたが、平藤の上手な注意のしかた、叱(しか)り方を手本にしていたという。
「平藤さんは指導もうまいが、昔から勝負事が好き」(畠山)
平藤は奨励会時代はギャンブルに熱中していたが、四段になってからは賭け事をやめ、トランプなどのゲームに興味が移る。ゲームで養った勝負観が将棋にも役立ったようだ。また、平藤はゴルフで初めてコースに出たときにホールインワンを決めるなど、勝負強さもあわせ持つ。「平藤さんは50代なのに、非常に若々しい攻め将棋。毎年若手をやっつけていて、ひそかに若手キラーと呼ばれています」(畠山)
平藤はここ数年の順位戦だけでも、六段時代の糸谷哲郎八段、佐藤天彦八段などを破っており、前期は、昇級した中村太地六段に唯一黒星をつけている。平藤は対局前のインタビューで「手強(づよ)い新鋭との対局を楽しみたいと思います」と語った。
斎藤は初めてのNHK杯本戦出場。斎藤は順位戦B級2組への昇級、2015年度勝率1位を決めたばかりだ。この1年を見ても、電王戦でコンピューターソフトに勝利、竜王戦5組優勝など、活躍はめざましい。
「どこに行っても私の指導対局を受けに来る小学生がいて、その子が斎藤でした」(畠山)
8歳のころに初めて畠山から指導対局を受けた斎藤少年は畠山に惹(ひ)かれ、以来、畠山の指導対局を受け続けるようになった。
「斎藤が10歳のときに本人が書いた弟子入り志願の手紙をもらいました」(畠山)
将棋は指さないがそれでもよいのなら、という入門の条件だったが、それでも斎藤少年は、畠山が出るイベントにまで来て指導対局を申し込むほど。意気に感じた畠山は、それ以降、奨励会を卒業するまでの間の斎藤と800局以上指すことになる。
「斎藤は攻め将棋だけど丁寧な受けも苦にしない」(畠山)
当人はインタビューで「伸び伸びとした前に出る将棋を指したいです」と抱負を述べた。
■『NHK将棋講座』2016年6月号より

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