村山慈明NHK杯が振り飛車について思うこと

撮影:藤田浩司
4月から『NHK将棋講座』の講師を務めている村山慈明(むらやま・やすあき)NHK杯。講座の最後には「村山慈明の序盤は1日にして成らず」と題したコラムを連載しています。6月号は「振り飛車について思うこと」。

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棋士の研究というと、どんな姿を想像しますか? 棋譜用紙を片手に、盤で駒を動かしてはにらめっこ──。そんな光景を思い浮かべる方が多いのでは。
私はというと、パソコンでデータベースの棋譜をカチカチと並べることが多かったですね。振り返ると、もっと実際に盤で並べて、一手一手の感触を手になじませておけばよかったなあ、と思います。

■野球少年だった中学生時代

中学生のころ、奨励会では苦労していました。二段昇段の一局を、確か10回くらい負けたのではないでしょうか。このとき学校では野球部に入っていて、それがきつかったということもあります。
この野球部、最初は「体力づくりをしよう」くらいのつもりで気軽に入ったのですが、練習はハードで、家に帰るともうくたくた。当然、将棋の勉強はおろそかになって成績も伸びず……。とはいえ部活動のある日々は充実して楽しく、いい経験になりました。

■藤井九段との研究会は発見の毎日

藤井猛九段にはずっと将棋を教わっています。研究会に誘われたのは、私が三段に上がったとき。研究会では初対戦から6連敗して、トップ棋士とのレベルの差を感じました。いま思えば、新米三段とよく一緒にやってくれたものです。
角交換型振り飛車といえば、あるとき角交換から△3三桂と跳ねる形になると、藤井九段は「これはいないほうがいいんだよな」と、ひょいっと桂を取り去る仕草。頭の丸い駒が3三の地点にいるのはよくない、という意味です。考えることが違うんだなと、印象に残りました。

■振り飛車は受難の時代。復活の兆しは?

現在は振り飛車を指す棋士が少なく、振り飛車党には受難の時代。藤井九段はよく「振り飛車を応援してください」と言いますが、あれはファンだけではなく、実は棋士にも向けたものなんですね。
ただ、またブームは来ると思います。注目しているのは藤井システム。いまは振り飛車の旗色が悪いとされていますが、新研究でひっくり返るかもしれません。
■『NHK将棋講座』2016年6月号より

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