井山裕太棋聖と河野 臨九段 屈指の好カードの行方は

左/河野 臨九段、右/井山裕太棋聖 撮影:小松士郎
第63回NHK杯 準々決勝 第1局は河野 臨(こうの・りん)九段(黒)と井山裕太(いやま・ゆうた)棋聖(白)の対局だった。高見亮子さんの観戦記から、序盤の展開を紹介する。

* * *


■変わり続けた盤上の景色

井山裕太棋聖は、昨年7月下旬から本局まで実に24連勝中。碁聖位を防衛すると、名人位を4連勝で防衛し、王座、天元位をともに3連勝で奪還。六冠に返り咲きつつ、他棋戦でも勝ち続けて負けることを知らない。1963年から64年にかけて坂田栄男九段が打ち立てた29連勝の大記録を、半世紀ぶりに塗り替える勢いだ。
河野臨九段は、棋聖戦Sリーグ、名人戦リーグ、本因坊戦リーグすべてに在籍するたった3名の棋士の一人。文句なしの好カードが準々決勝で組まれた。
「激しい競り合いの中で、どちらが冷静な判断を下していくかが見どころ」と羽根直樹九段。驚かされるのは、競り合いと冷静な判断が見どころという状況が、終わりまで続いたことだ。
「大フリカワリ」の英断が次々と決行され、碁盤の景色がどんどん塗り替えられていきながら形勢の均衡は保たれ続けた。

■右辺を捨てて中央へ

本局は名場面満載なため、序盤は少し急ぎ足でお伝えする。黒番の河野臨九段は、黒5、7と立ち上がりこそ穏やかだったものの、白16というやや挑発気味の三間ビラキに黒17と打ち込んで、盤上は一気に険しくなった。
白18では、Aとツケて黒15の一子を制するのが自然に思えた。黒21まで逆に白16の一子を制される。だが、白22と右上の黒に迫り、白24と準備してから白26、28と出切るのが井山裕太棋聖の大胆な構想だった。白32のときが、黒の岐路。

1図の黒1と出れば、白の連絡を断つことができる。だが、白2から8までと右辺の白二子に逃げ出される。白の弱い石は2つ。黒の弱い石は4つ。この戦いに自信の持てない黒は、相手の注文ではあるが、33と穏やかな道を選んだ。

白36のマゲから40の押しは井山の構想どおり。右辺を捨てて中央に壁を築き上げた。河野は「黒がまずい」と振り返る。ただ、白46は2図の白1が勝ったようだ。黒2はやむをえず、白3、本譜の黒Bの進行が、局後に検討されていた。

※投了までの記譜と観戦記はテキストに掲載しています。
■『NHK囲碁講座』2016年4月号より

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