藤原直哉七段、自戦記で振り返る行方尚史八段とのNHK杯

左/行方尚史八段、右/藤原直哉七段 撮影:河井邦彦
第65回NHK杯2回戦・第13局は行方尚史(なめかた・ひさし)八段(先手)と、藤原直哉(ふじわら・なおや)七段(後手)が激突した。藤原七段の自戦記から、序盤の展開を紹介する。

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■ チャンス




NHK杯戦前年度準優勝。春には名人位に挑戦。行方尚史「名人」と指せないのは残念だが、トップクラスと対局できるのは棋士冥利(みょうり)につきる。
五月に50歳になった。
トーナメント表を見ても、僕より年上の人が残っていない。若手が勉強熱心で強いのは分かるが、あまりにも寂しい。
ここは三流の、いや五流棋士の僕が勝って男を上げる大きなチャンスだ。ステキと言われて女性ファンができるかもしれない。公式戦四連敗中だったが、そろそろ勝てるころだ。


■向かい飛車

チャレンジしたい気持ちが高まって、向かい飛車から△1三桂(2図)と積極的な動きをみせた。気分は升田幸三である。行方さんは時間を使いだした。作戦成功を感じる。▲8八銀から手堅く指してくる。
ただ▲5七銀は疑問手で、▲6八角から▲3七桂と指せば、僕の作戦は空振りだったのかもしれない。
解説で兄デシの井上慶太九段からは、局後の感想戦で「△1三桂は、はやらない作戦」と厳しいお言葉があった。


■粘りの男

行方さんの強さは東北人らしい粘り強さと、終盤の切れ味だと思う。それとアルコールも強いらしい。
その行方さんは▲6八銀以下四枚穴熊に囲う。しかし局後駒が偏りすぎと語る。
僕は△7三角と飛車に狙いをつけながら、押さえ込みを目指す。このあたりの気分は大山康晴である。
行方さんはさばきを求めて、▲4六歩以下局面をほぐしにかかる。
△3五歩(4図)。振り飛車らしさはでていると思った。

※投了までの記譜と観戦記はテキストに掲載しています。
■『NHK将棋講座』連載「棋戦プレイバック」2016年1月号より

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