江戸時代の園芸を感じられる施設や名所が知りたい

新宿御苑の菊花壇展。迫力満点の大作り花壇。花数518輪の黄色の大菊が、半円形に 仕立てられている。品種名は‘裾野の輝’(2014年撮影)
園芸研究家の小笠原左衛門尉亮軒(おがさわら・さえもんのじょうりょうけん)が、園芸家のみなさんから寄せられた質問に答えるミニコーナー「小笠原左衛門尉亮軒の園芸家 人生相談」。11月号では、「江戸時代の園芸を感じられる施設や名所が知りたい」というご相談をいただきました。

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私は旅行などで地方に行くと、その地域の植物園や花の名所などを見て回るのが大好きです。小笠原先生は江戸時代の日本の園芸に大変お詳しいとうかがっています。江戸時代、日本の園芸は、世界的に見てもレベルの高いすばらしいものだったようですね。そんな江戸時代の園芸のすばらしさが感じられるような施設や花の名所をご存知でしたら、ぜひ教えていただけないでしょうか。行ってみたいです。(神奈川県/Iさん 35歳)
私も国内外旅行の折、行く先々の植物園や生産農園をはじめ園芸施設を見学させていただくのが大好きです。同行者がある場合、「小笠原は本屋と植物園へ入ったらちっとやそっとでは出てこない」と嫌われたものです。
さて、ご相談の江戸時代から続く植物、園芸施設のおすすめは
●江戸幕府が貞享元年(1684 年)開園した「小石川御薬園」現在の通称「小石川植物園」です。東大の管理となり(正式名称は「東京大学大学院理学系研究科附属植物園」)、遊園地化されておらず何よりです。
●文化元年(1804 年)、佐原鞠塢(きくう)が梅屋敷として開園、その後、四季の植物を集めた「向島百花園」は、江戸の民営植物園の嚆矢(こうし)というべきでしょう。
●今1か所は、明治39年(1906年)開苑の新宿御苑内の菊花壇展です。設立は明治ですが、苑内の菊花壇は、江戸時代、大名庭園で行なわれていた「菊花壇」の技術と特殊な花壇づくりを今に伝えるもので、世界遺産にもと思うほどすばらしいものです。公益社団法人園芸文化協会の主催で、毎年私がこの菊花壇の案内役をしております。
地方では、千葉県の国立歴史民俗博物館内「くらしの植物苑」に、江戸時代から続く伝統植物が集められ、季節ごとに展示されています。また、熊本城内には、江戸時代から続く「肥後菊花壇」が季節を彩っています。
小笠原左衛門尉亮軒拝
■『NHK趣味の園芸』連載「小笠原左衛門尉亮軒の園芸家 人生相談」2015年11月号より

NHKテキストVIEW

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