永瀬拓矢六段が電王戦で受けた影響とは

写真:河井邦彦
鈴木大介(すずき・だいすけ)八段からバトンを手渡されたのは永瀬拓矢(ながせ・たくや)六段。鈴木八段に大きな影響を受けたという対局からコンピューターの将棋についての見解など興味深い話題が飛び出しました。

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■編集部から永瀬拓矢六段への質問

Q 棋士として「勝負師」「研究者」「芸術家」の3つの要素の配分を、ご自身ではどう考えていますか?
現在は勝負師と研究者が5対5といった感じです。芸術面については、まだ自分にはよく分かっていないところがありまして。芸術とは何か。実に難しいですよね。見られることについての意識は特にしていません。私は勝つことがすべてだと思っているからです。勝つための研究ですので、配分としては勝負師と研究者が半々になります。

■永瀬拓矢六段、自らを語る

私はゲームを攻略するのが好きな少年でした。将棋はとても広い世界で、奥が深いなと子ども心に感じたものです。いつも決まった配置からスタートするのに、同じ将棋になることはありません。しかも、簡単に白黒がつきません。プロ棋士が長年にわたって毎日のように対局を重ねているというのに、解明されていないのですから。攻略することが不可能だと感じることも、将棋の魅力ですね。
奨励会入会の同期に佐々木勇気(五段)さんがいます。小学生大会で対戦したり、プロになってからも練習将棋を指したり、子どものころから長いつきあいになります。佐々木さんは少年時代から才能にあふれていて、自分とは対極にいると感じていました。そんな存在がいたからこそ、自分は頑張れたのではないかと思っております。
今年の春に出場した電王戦では、内容よりも結果を優先しました。第1回ならば内容を重視したかもしれません。しかし、プロ側が負け続けて迎えたファイナルでしたから、勝たなくてはいけないという強い意志を持って臨みました。私もプロ棋士ですから、できることなら内容で勝負してみたいという気持ちはありました。ですので、その葛藤が精神的に厳しかったです。

■鈴木大介八段より、永瀬拓矢六段に質問

 
Q 電王戦に出場してから、永瀬さんはよくも悪くも将棋が変わって来たように思います。どう変わったと考えていますか?
自分ではよく分かっていませんが、変わったんですかねぇ。冒頭で研究5、勝負師5と言いましたが、それは電王戦後のことです。以前は研究が7ぐらいを占めていましたが、電王戦に出場して、将棋は研究だけではなく他にも大事な要素があると感じたものですから。前述しましたが、ファイナルということで内容よりも結果にこだわったことが影響しています。自分でもはっきりとは認識していませんが、言われてみるとそうなのかなと思うところはあります。以前よりも手数が伸びてきました。勝負を重視して粘り強く指すことで、頑張れているのでしょうか。そういう意味では、電王戦の影響をかなり受けているのかもしれません。
■『NHK将棋講座』2015年11月号より

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