石を取って勝つ! 松本武久七段からの挑戦

イラスト:橋本幸規
「碁の要素がすべて詰まっている」とプロ棋士が認める13路盤。NHKテレビテキスト『囲碁講座』の別冊付録「松本武久の選りすぐり13路盤問題集」では、初段前後の棋力の皆さんが確実に上達できるように工夫した、13路盤ならではの問題を厳選して掲載、解説しています。今月のテーマは「石を取って勝つ!」です。松本武久(まつもと・たけひさ)七段からの出題です。

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1月号のテーマは、皆さんが大好きな「石を取って勝つ!」です。
実は僕も、石を取って勝つのは大好き──これは子供のころから現在に至るまで変わりません。大人になった僕の棋風が「力戦家」とか「腕力が強い」と表現されることが、その証明でしょう。
覚えたてのころ、碁は「相手の石を取るゲーム」だと思っていましたから、最初から最後まで、ひたすら相手の石を追いかけていました。うまく取ることができれば大喜び、取れなかったら悔し涙──そんな感覚で碁盤に臨んでいたのです。
ところがある程度の棋力になってくると、石を取りたいと思ったからといって取れるものではないことが理解できるようになります。碁は交互に打つゲームですから、自分が追いかければ当然、相手は逃げるので、捕まえることができるはずはありません。
そうした経験を繰り返して「一直線に追いかけても取れない」ことを学び、やがて「右を取るぞと見せかけて実は左を狙っている」という、モタレやカラミの技術に目覚めました。こうした経緯は僕に限ったことではなく、皆さんも全く同じ道をたどってこられたことでしょう。
この「モタレとカラミ」については、先月号のテーマとして取り上げました。将棋で言う「王手飛車取り」に似た快感を味わっていただけたものと思います。
そして今月号は、一転して「石を取って勝つ!」をテーマに選びました。相手の石を取るチャンスがめぐってきたのは、相手が本来すべき備えを怠ったからこそ、こちらに「取って勝つ」好機が訪れたと考えるべきでしょう。ですから相手のミスをしっかりとがめないと「無理が通れば道理が引っ込む」こととなり、勝利の女神はくるりとあちらを向いてしまうことになります。

■問題:不備をつく!


ポイント:白の姿には不備があります。そこをついて、勝負を決めてください。

■解答:ハネ込みで切断!

正解図

黒1のハネ込みが白の不備をつく急所。白2に黒3とツナぎ、aとbを見合いにして白を分断――黒の勝勢となりました。白2で3なら黒2で、やはりaとbが見合いです。
失敗図

黒1のハネ出しでは白2とツナがられ、チャンスを逃してしまいます。地合いも足らず敗勢です。黒1でa、白b、黒cのハネツギも白dと備えられて地合いが足りません。
■『NHK囲碁講座』2015年1月号より

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