うつは心のガン? 総勢17人の"うつヌケ"体験談

うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち
『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』
田中 圭一
KADOKAWA
1,080円(税込)
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 生涯で13人に1人の日本人が患うとされるうつ病。厚生労働省が発表している患者調査では、精神疾患による医療機関の受診者数は大幅な増加傾向にあり、統計に現れない人がいることも考えると、「自分はうつ病と全く無縁」と言い切れる人は非常に少ないのが現状ではないだろうか?

 今回ご紹介する、漫画家・田中圭一さんによる本書『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』は、向いていない仕事を無理して続け、うつ病を発症した著者が、自身の体験をもとに総勢17人のうつ病経験者に取材をし、彼らのうつ病発症から寛解までを漫画形式で紹介した1冊。

 たとえば、筋肉少女帯の大槻ケンヂさんは、24歳の若さで武道館ライブを成功させるなど仕事は順調だったが、もともとのネガティブ思考と地下鉄サリン事件などの当時の社会状況が相まって、うつ病を発症。心気症にも罹り、ひどいときには「エ」という文字を見ただけで「エイズ」を連想し、「死」への恐怖に取り憑かれる日々を送った。そんな大槻さんを回復に向かわせたのは、趣味や友人の存在のほか、仏教の考え方を取り入れた治療法「森田療法」に出会ったこと。今では「『不安』は消えることなく時々ちょっかいを出してくる困った存在だけど いっしょに歩くことが可能なヤツだ」(本書より)と思えるようにまでなったという。

 「根っからの社畜体質」(本書より)というOLのずんずんさんは、いわゆるブラック企業にとことんまで付き合ってしまうことで、精神を病んでしまった経験が2度ある。そんな彼女は、メンタルを強くするために受けていたコーチングを通じ、父に愛された実感がないから、権威からの無茶な要求にNOと言えない性格を形成してしまっていたことに気付く。そこで、ずんずんさんは、父が自分を大切に想ってくれていることを電話で改めて確認し、それによって過去のトラウマを解消。現在はコーチングする側に回るため、勉強を始めている。

 本書に収録されている別の項では、天候によって極端に精神状態が左右される人や度重なるうつの再発に悩まされていた人の体験談などに加え、現役の精神科医の話も収録。うつ病に悩まされている人はもちろん、最近気持ちが落ち込みがちの人まで、本書を通じて幅広い人に回復へのヒントを得てもらいたい。

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