珍スポトラベラー・金原みわさんが伝えたい、さいはての現場とは?
- 『さいはて紀行』
- 金原みわ
- シカク出版
- >> Amazon.co.jp
金原みわさんは、日本全国の珍スポットと呼ばれる変わった場所を巡って紹介する珍スポトラベラー。その取材力、特に取材対象の懐にするっと入っていき、普段聞けないことを聞き出す能力には定評があります。そんな金原さんの処女作『さいはて紀行』がこのたび上梓されました。
と、同時に、仕事を辞めて、日本一周珍スポ巡りを敢行中。寝泊まりはほとんど車中泊というハードな旅。その模様はツイッターでリアルタイム実況中です。そんな金原さんに、なぜ珍スポットにはまったのか、処女作について、日本一周の状況などを語ってもらいました。
――そもそも珍スポットにはまるきっかけは何だったんですか。
もともと国内旅行が好きで、青春18きっぷ(JRが発行する各駅停車の在来線が一日乗り放題になる切符)を使っていろんなところに行っていたんです。大学生の頃には、お寺、特に宿坊(泊まれるお寺)にはまって、全国各地を巡っていたんです。その道すがらで、珍スポットと呼ばれる場所はあるにはあったんですけど、そのときは、なぜかあまり惹かれるものはなかったんです。変な場所として、あえて避けて通っていたふしもありました。本格的にはまったのはじつは社会人になってからだったんです。社会人になったら、自分で自由になるお金も増えて、もっと旅行に行く機会が増えました。そのときに、淡路島にある、とある珍スポ施設に行って衝撃を受けて、そこから、(珍スポットを)ガンガン狙って行くようになりました。私、大学時代は、テニスサークルとかに入るタイプの普通の大学生だったんです(笑)。その延長線上で、社会人になって、同僚の女の子とふたりでドライブに行ったときにその施設に入ったので、もうひとりの子は完全に引いてました(笑)。気分が悪くなって先に外に出て行って。最初は友達と行っていたんですけど、だんだん、ひとりで行くようになって。より深く話を聞くにはひとりのほうがいいのかなって。
――本格的に珍スポトラベラーになろうと思ったのはいつ頃ですか。
最初は仕事をしながらホントに趣味の範囲内でした。でも、これは何かしら残しておかないといけないんじゃないかと思い始めて、今から5年前くらいにブログを始めたんです。その1年後、珍スポの写真展をしたのですが、そこからブーストがかかりました。ちょうど関西にロフトプラスワン(トークライブハウス)が出来て、ヘタしたら月に2回も出るようになって。人前でしゃべるようになって、これは本腰をいれて取り組まないといけないなと思い出して。
――今回初著書で『さいはて紀行』と名付けられたのはなぜなんですか。
文章中には、特にさいはてという言葉はでてきません。さいはてという概念は、出版をする際に決めたものなんです。私は、この本を「珍スポ紀行」とかそういう名前にしたくなかったんです。普段は便利だから珍スポトラベラーと名乗っていますけど、ホントは、もっといい言葉がないかなとずっと思っていて。そこで出てきたのが「さいはて」というフレーズなんです。さいはてという概念は、例えば、北の端とか、南の端とか、砂漠の果てとかアマゾンの奥地とか、そういうものを想像すると思うんですけど、じつは、身近にあるものだと思っているんです。もしかしたら、他人から見れば、私自身がさいはてかもしれない。人によってさいはては、どこにでも存在しえる。今回は、私にとってのさいはてを集めたという意味でのさいはて紀行というタイトルです。
――さいはてエピソードのなかで特に気に入っている章はありますか。
そうですね......。やっぱり選べないです。すべてに思い入れがあります。
――僕は、キリスト教看板の製造工場を取材した「宗教のさいはて」の章が一
番好きなんですが、金原さんの取材力、取材対象の懐に入っていくさまが凄く光っています。その秘訣はありますか。
取材に行くときは、いつも気合いをいれて、お菓子を持って行きます(笑)。
――菓子折り(笑)。
菓子折りは強いですよね(笑)。
――今、日本一周珍スポ巡りを敢行中とお聞きしたのですが、どうですか。
純粋に楽しいです。仕事を辞めたのも、これ1本でやっていくためというわけではなく、もっと珍スポットを巡るために、時間を拘束されたくないというのが理由ですから。自由にやらせてもらっています。貯金を切り崩しながら(笑)。でも、旅をしていると、もちろん珍スポットも面白いですが、そこにいる人との出会いが一番面白いかもしれません。高知の山奥の大心劇場に行ったのが、今のところ一番の楽しい思い出です。昭和30年くらいにできた映画館です。テレビが普及すると、映画館は寂れていっちゃうんですが、そこの支配人がとても面白い人で。映画が始まる前に自分の歌を歌うんです。これがいいんです。最初はちょっとバカにしてたんですけど、だんだん涙が出てきて。お客は私ひとりですから、1対1です。音源化されていてついついCD買っちゃいました(笑)。
――これから読む人に向けて、どういうふうに読んでもらいたいですか。
いろんなところを訪れて、感じたことを主に書いているので、珍スポットを眺めるだけではなくて、どう捉えたかというところを読んでもらえたら嬉しいです。
プロフィール
かねはら・みわ 珍スポトラベラーとして全国の珍しい人・モノ・場所を巡ってレポートしている。『Meets Regional』『ジモコロ』『ROADSIDER's weekly』などに連載を持つ。