その土地を知りたければ、居酒屋に行くのが一番?
- 『日本の居酒屋――その県民性 (朝日新書)』
- 太田 和彦
- 朝日新聞出版
- 821円(税込)
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「東京の飲み会幹事は、まず出席者名簿と席次を決め、挨拶を誰にするかを考える。名古屋は安い予算で豪華を狙い、タイアップのおつまみ持ち込みを算段する。京都はお茶屋に電話するだけ。大阪は宴会芸の練習を始める。長野は最後に歌う歌を決める。高知はあいつも呼べと人数が増える。福岡は呼んでない出席者がいて、終わってから『あんた誰?』と聞く。沖縄は周りで飲んでいる人を招き入れる」(『日本の居酒屋----その県民性』より)
47都道府県、それぞれに風土が異なる日本。その各々の風土がもたらす産物を最適な料理法で味わうことができ、さらには脈々と息づく歴史や、そこに暮らす人びとの人情が自ず反映される存在である「居酒屋」。
グラフィックデザイナーで"居酒屋探訪家"でもある太田和彦さんは、日本中の居酒屋を巡り歩くうち、居酒屋ほど各地の県民性が表れるところはないということに気がついたといいます。
本書『日本の居酒屋』では、実際に太田さんが訪れた数多くの居酒屋の中から、その土地らしさを感じることができる、特にオススメのお店を紹介。各都道府県における居酒屋の特徴を県民性と共に解き明かしていきます。
たとえば、ビールの消費量が日本一の東京。東京の居酒屋の特徴は、江戸の気風を残した長い歴史を持つ店と、最新のスタイルの店の両方があること、日本各地の地酒を並べた銘酒居酒屋が多いこと、酒にうるさい客が多いこと。そしてあまり料理料理しない小粋な肴を喜び、味のはっきりした明快なものを好むこと。
「小鉢の簡単な肴でかけつけ三杯をキューッとやるいなせな『粋』を信条とし、飲むスタイルを気にするのが東京流で気取って飲む。しかし口ほどにもなく酒は弱く、三本も飲めば寝てしまい、長尺勝負の秋田あたりにはとてもかなわない。江戸っ子は口では勝つが酒では負け、東北人は口は負けるが酒では勝つ」(本書より)
ちなみに、そんな東京におけるここ数年の居酒屋の傾向は、都心の盛り場を離れた住宅地に、大人を相手にする高水準の酒料理を提供する"郊外型上等居酒屋"が増加してきたことなのだそうです。
「居酒屋や酒場ほどその国の庶民が裸になっている所はなく、そういう意味で間違いなく国の文化」(本書より)だという太田さん。
それぞれの都道府県を訪れた際には、太田さん一押しの居酒屋に足を踏み入れ、地の肴で杯を傾けながらその空気に身も心もどっぷりと浸ってみれば、土地に息づく文化が垣間見えてくるかもしれません。