あなたは心から「仕事がしたい」と言えますか?
- 『仕事。』
- 川村 元気
- 集英社
- 1,512円(税込)
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「ふと思う。僕は今、心から『仕事がしたいです』と言えるのだろうか。金のため、もしくは立場上なんとなく働いているのではないだろうか」
映画プロデューサーの川村元気さんは、自著『仕事。』の中で自身の中で抱いている仕事へのスタンスに対し、そう疑問を投げかけます。川村さんは、仕事について考え、その結果、仕事には「金をもらうための仕事」と「人生を楽しくするための仕事」の2種類があることに気付いたそうです。そしてこう語ります。
「大人になってからの、ほとんどの時間。つまり生きているほとんどの時間、僕らは仕事をしている。だとしたら、僕は金のためではなく、人生を楽しくするために仕事をしたいと思う。心から『仕事がしたいです』と叫びたい」(同書より)
同書では、人生を楽しくするような仕事なんてできるのか、どうやったらそのきっかけを掴めるのかと、"その答え"を求めて、川村さん自身が世界の最前線で働いてきた12人にインタビューを行い、そこから得た、これから人生を楽しくする"仕事の教え"を紹介しています。
例えば、連続ドラマ『男はつらいよ』や映画『幸福の黄色いハンカチ』を手がけた山田洋次監督との対話。川村さんは、独創性が重んじられる風潮のある映画界の中でも、"まねぶ"(※「真似る+学ぶ」の造語)ことで吸収できることがあると山田監督に問いかけます。それに対し、山田監督もこう頷きます。
「一つの学ぶ姿勢だと思ったね。どんな職人の仕事でも、最初は師匠の真似をすることから始まる。小津さんの『東京物語』でも「これしかない」っていうくらい理にかなった演出が随所にあって、それは僕が撮った『東京物語』という映画でもそのまんま、美術まで真似ています」
かくいう山田監督ですが、若い頃は小津安二郎監督の作品をばかにし、批判していたそうです。しかしその後、「アイツはばかだとか、あの作品はだめだとか、決めつけるのはかっこよかったり気持ちがよかったりするけど、そういう人間はえてして才能がない場合が多い」(同書より)ということに気付いたそう。そこから、昔は否定していたものを良いと認めるのも、重要なのではないか、というスタンスに至り、"まねぶ"ことを実践したのだそうです。
一方、コピーライターの糸井重里さんは、長いキャリアの中で一番しんどかった時はいつか、という川村さんの問いに対して、「個人的には女性にふられたみたいな話のほうが、よっぽど悲しいんじゃないですかね。仕事ってやっぱり人間の一部でしかない。全力を尽くしてもね。仕事以外の時間も全部そのために生きてるって人は、いちゃいけないと思います」と自身の仕事観を語ります。
そんな糸井さんに対し、川村さんはこう漏らします。
「『とにかく働け』っていう人がどうしても多い中で、『基本的に働きたくないんだよ』っていう糸井さんみたいな人もいて、両方のタイプが存在するんだってことをみんなが知ることも、仕事をするうえで大事なのかもしれませんね」
本書には他にも宮崎駿さん、坂本龍一さん、篠山紀信さんなど、世界を面白くしてきた巨匠の仕事の教えがたくさん詰まっています。彼らの言葉に耳を傾けることで、あなたも心から「仕事がしたいです」と叫びたくなるかもしれません。