雑誌『オリーブ』を知るための必読書

オリーブの罠 (講談社現代新書)
『オリーブの罠 (講談社現代新書)』
酒井 順子
講談社
864円(税込)
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 かつての"オリーブ少女"たちにはお馴染みの、マーガレット酒井(雑誌『オリーブ』での連載時のペンネーム)こと、酒井順子さん。オリーブ文化が近年再び脚光を浴びはじめるなか、このたび『オリーブ』の執筆者かつ愛読者であった酒井さんによるオリーブ論、『オリーブの罠』が刊行されました。

『オリーブ』は、現在も刊行が続く男性向けファッション・情報誌『ポパイ』の女の子版として、1982年に創刊されて以来2003年まで刊行された雑誌であり、そのキャッチフレーズは『ポパイ』の「Magazine for City Boys」に対して「Magazine for City Girls」というもの。

 こうして『ポパイ』のテイストを受け継いで誕生した『オリーブ』ですが、創刊から数年のうちに幾度かの路線変更があったのだと酒井さんは振り返ります。そのため、購読していた時期によって、それぞれが持つ"オリーブ像"は異なっているのだそうです。

「約二十年ほど刊行されていた中でも、時代によって、微妙なカラーの違いがある『オリーブ』。一九六〇年代後半に生まれて八〇年代の『オリーブ』を読んでいた私のような前期オリーブ少女と、一九七〇年代後半に生まれて九〇年代の『オリーブ』を読んできた後期オリーブ少女とでは、その感覚も異なってきます」(同書より)

 では具体的に、どのようなカラーの違いがあったのでしょうか。例えば酒井さんは、1982年の創刊から1990年までの『オリーブ』の変遷を次のように分類します。

1 初期のアメリカ礼讃時代
2 付属校文化とリセエンヌ文化の共存時代
3 ナチュラル&カルチャー時代

 1での『オリーブ』が打ち出したイメージは、「西海岸、ウィンドサーフィン、バレイガール」(バレイガールとはLAの谷間、サンフェルナンド・バレイに住んでいる女のコたちのこと)といったものであったのに対し、2でのイメージは「ロマンチック、パリ、リセエンヌ」(リセエンヌとは「フランスの中・高校生の女の子たちのこと)といったもの。さらに3になると、フリッパーズ・ギター、和光学園をはじめとするリベラル感が押し出されていく......というように、時代によってオリーブは、そのカラーに大きく変化があったのだそうです。

 当時の少女たちの、その後の人生における価値観にまで大きく影響を及ぼした『オリーブ』とは一体何だったのか。その変遷を、時を経たいま再び細かに振り返ることにより、新たに『オリーブ』が多角的に解明されていく一冊となっています。

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