「ソーシャル」の時代--ラグジュアリーブランドに求められるものとは?
- 『ファッション&ラグジュアリー企業のマネジメント: ブランド経営をデザインする』
- エリカ コルベリーニ,ステファニア サヴィオロ
- 東洋経済新報社
- 3,780円(税込)
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「贅沢とは、お金を持っていることや、けばけばしく飾り立てることではなく、下品でないことをいうのです」
「世の中には、ただの金持ちと真に豊かな人がいる」
これら2つの言葉はシャネルの創業者、ココ・シャネル(1883-1971)によるものです。20世紀のラグジュアリー業界のトップランナーともいえる彼女ですが、単に高級なもの、値の張るものを追求すればよいわけではないことを、生前の彼女は考えていたことがわかります。
21世紀に入り、「ソーシャルメディア」「CSR(コーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティの略)」など、ソーシャルという単語が多く使われるようになりました。それだけ社会とのつながりや社会貢献などが重要視とされる時代になり、ラグジュアリーブランドもただ高級なものを作るだけではなく、社会の真の豊かさのために「何か」をすることが求められるようになりました。この点で、シャネルの考えに時代が追いついたといえるかもしれません。
実際に、ソーシャルな取り組みを行うラグジュアリーブランドが続々と登場しています。
たとえば、ルイヴィトンは東日本大震災で被災した宮城県気仙沼のカキ養殖支援をはじめました。具体的には気仙沼湾に注ぐ川の上流付近に木を植えるという取り組みです。落ちた葉が川を流れ海へたどり着くことで、山の養分が海にもたらされることが期待されています。およそ50年前、フランス・ブルターニュ地方のカキが疫病で壊滅的な被害に遭った際、気仙沼から種ガキが送られたことと、ルイ・ヴィトン創業者が山地の出身であることが、この取り組みの背景にあります。
ファッションデザイナーのトム・フォードが自ら立ち上げたブランドで提唱するのは、「サステナブル・ラグジュアリー(持続可能なラグジュアリー)」という概念。トム・フォードといえば、それまで古典的なデザインの多かったグッチに、半年ごとに新たなデザインを取り込み、経営不振から立ち直らせたことで有名です。しかし、彼は「シーズンが終わるたびに、すぐ捨てる」というファッションブランドのあり方に嫌気が差したといい、現在は、女性たちができるだけ長く着られる服をつくることに取り組んでいるそうです。
こうした動きはファッションだけでなく、自動車のラグジュアリーブランドにも。日本発高級自動車ブランドのレクサスは、アメリカの独立系映画会社であるワインスタインとともに「LEXUS SHORT FILMS」を実施。才能に恵まれつつも、なかなかチャンスを得られない若手映画監督を支援しています。また、7月からはCMシリーズ『AMAZING IN MOTION』の新作ショートフィルムとして『STROBE(ストロボ)』が世界で放送開始しました。夜の街を「ライトマン」が駆け抜けるという内容で、SF映画のようなカッコよさが盛り込まれたCMです。
このような取り組みは企業規模の大きさだけでなく、ブランドの信用があってこそのもの。実際に、企業で働く人にとってブランディング、戦略を組み立てるなどの作業は、何から手をつければいいのかわからないかもしれません。そこでご紹介したいのが、本書『ファッション&ラグジュアリー企業のマネジメント』。各国の市場やブランドを取り上げながら、グローバルで成功するためのマネジメント手法について実践的に解説されています。
世界中で富裕層が拡大する中、新たなブランド像が求められているラグジュアリーブランド。その戦略の中に見えてくるものとはなにか。ご興味のある方は、是非、手にとってみてください。
【関連リンク】
Amazing in Motion - STROBE
https://www.youtube.com/watch?v=jhBfeYxTUB0