新聞やテレビはオワコンではない

メディアの苦悩――28人の証言 (光文社新書)
『メディアの苦悩――28人の証言 (光文社新書)』
長澤 秀行
光文社
886円(税込)
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 新聞やテレビなど従来型のオールドメディアと、年々、その勢力を拡大させているネットメディア。これから、それぞれのメディアはどこへ向かい、また、どのような役割を果たすのでしょうか。

 まず新聞やテレビなどマスメディア。主にネット上で、これらは「オワコン」(=終わってしまったコンテンツ)と呼ばれ、衰退していくメディアという認識があります。確かに、ネット媒体など新興メディアと比べると、"旧態依然としたメディア"という側面はあるかもしれません。

 また、視聴率の低下、部数減など現実的な問題に直面し、マスメディアの"中の人"の危機意識は高まっています。しかし、新聞やテレビは本当にオワコンなのでしょうか?

 本書『メディアの苦悩 28人の証言』の著者で元電通デジタル・ビジネス局長の長澤秀行さんは、こう語ります。

「さまざまな調査によっても立証されていることですが、たとえばテレビは今なお圧倒的な影響力を持っていますし、新聞のメディアとしての信頼感も絶大なものがあります。コンテンツとしては決して『終わって』いません。ただし、これまで新聞・テレビが築いてきた『仕組み』そのものはプラットフォーム企業に浸食され始めています。乱暴に言うならば、終わりつつあるのは『コンテンツ』ではなく『仕組み』なのです」(本書より)

 
 一方、新しいとされるネットメディアはどうでしょうか。スマートフォンの登場により、爆発的に増えたインターネットユーザー。この結果、メディアは一方通行的に情報を発信するだけの存在ではなくなり、ブログ・Twitter・Facebookに見られるように、共感や共有、集合知形成を担う存在に発展しています。そして、それ故に、様々な問題が生じています。

 長澤さんは、ネットメディアのトップが、こうした問題に苦悩している点を指摘しつつ、こう語ります。

「新しい、また、スピード感が求められるメディアであるがゆえ、ビジネス構築と問題解決を同時進行しなければならない。(中略)数々の炎上事件、インターネットを介した犯罪、ステマやターゲットアドなどの広告------。日々ニュースで報じられるだけでも、問題は山積しています。ユーザーの等しいリテラシー向上にも限界があり、いわゆる『情報弱者』を生み出しやすい環境にあります」(本書より)

 新旧双方のメディアがそれぞれ問題を抱える中、各メディアのトップたちは何を考えているのでしょうか。本書は、現在、メディアで活躍する人物の証言をもとに「これからのメディアの役割」について考えるインタビュー集です。
 
 インタビュイーは、思想家の東浩紀さん、川上量生さん(ドワンゴ社長)、亀山千広さん(フジテレビ社長)、ネット編集者の中川純一郎さん、橋元良明さん(東京大学大学院教授)ら総勢28人の業界を代表するメディア人たち。今後のメディアのあり方について興味のある方は、是非、手に取ってみてください。

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