宮崎駿と高畑勲が語る「お互いの作品で一番好きなアニメ」
- 『映画を作りながら考えたこと 「ホルス」から「ゴーシュ」まで (文春ジブリ文庫)』
- 高畑 勲
- 文藝春秋
- 810円(税込)
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宮崎駿と高畑勲----------今年、創立30年を迎えるスタジオジブリが世界に誇る2人の巨匠。昨年、長編アニメーション映画の舞台から「引退」を宣言した宮崎監督に対して、自身の作品の記者発表で宮崎監督の引退について「宮さんが引退撤回しても驚かないでください」とコメントした高畑監督。長年、アニメ界を牽引し、東映動画(現・東映アニメーション)時代の先輩・後輩でもあるこのふたりは今、何を考えているのでしょうか?
両監督に、彼らを支え続けた鈴木敏夫プロデューサー(以下鈴木P)を加えた鼎談(文藝春秋二月号掲載)が、高畑勲著『映画を作りながら考えたこと 「ホルス」から「ゴーシュ」まで』に収録されています。
実は3人での鼎談は初の試み。これまであらゆるインタビュアーが「気になるけどなかなか聞けなかったこと」について鈴木Pがサクッと切り込む様子が見物です。
冒頭は、昨年、公開された宮崎作品の『風立ちぬ』と高畑作品の『かぐや姫の物語』をお互いにどう思ったか? というスリリングな質問から始まります。編集部が切り出した質問に対し「監督がお互いの作品について語るのは...」と言葉を濁す宮崎監督。「編集部が聞くのは勝手ですから」と促す鈴木P。そして、「それもそうですね」と前ノリになった高畑監督が「『風立ちぬ』は多くの女性同様に堀越二郎と奈緒子の恋愛映画だと思って観て...」と切り出し、「これ、言っちゃっていいのかな」と映画に対する批判を口にします。
その後、「魔女の宅急便でキキが飛べなくなった理由」や両監督の現在について語られた後、鈴木Pは最後に「お互いの作品で一番好きなものは?」と質問します。高畑監督は理由も語らず「となりのトトロ」と即答。
一方、宮崎監督は「アルプスの少女ハイジ」を挙げ、その思い入れをこう語ります。
宮崎監督:(前略)もっとちゃんと評価されてしかるべきなのに誰も評価していないから、頭に来ているんですよ。
高畑監督:僕のことはどうでもいいんだけど、『ハイジ』は「天の時、地の利、人の和」、この三つがすべて揃った。
かつてともに制作した「ハイジ」について、昨日のことのように振り返る両監督。同著には「ハイジ」のほか、「赤毛のアン」、「母をたずねて三千里」など、高畑アニメの当時のインタビューや制作過程の論考も多数掲載されています。これらを読み進めていくうちに、鼎談では語られていない「高畑監督がトトロを好む理由」がおのずと浮かび上がってくるかもしれません。