ドラマの主役になる時代もあった「フリーターという生き方」

アラフォー男子の憂鬱 (日経プレミアシリーズ)
『アラフォー男子の憂鬱 (日経プレミアシリーズ)』
常見 陽平,おおたとしまさ
日本経済新聞出版社
918円(税込)
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第二次ベビーブームとガンダムブーム、過酷な受験戦争、ウィンドウズ95とインターネットの登場、就職氷河期と金融危機......。この全てを体験したのが、今のアラフォー世代です。思春期の最中に年号が昭和から平成へと変わり、最も多感な時期に様々なモデルチェンジを体験した世代とも言えます。

アラフォー世代を代表する論客4人、速水健朗氏、常見陽平氏、赤木智弘氏、おおたとしまさ氏が、同世代の「これまで」と「これから」を語り合ったのが、書籍『アラフォー男子の憂鬱』です。

彼らの時代では歓迎されていたにも関わらず、いつの間にか「悪者」になってしまったものがあるといいます。それが「フリーター」です。

フリーターという生き方は、1990年頃までは夢を追いかけるための手段として歓迎されていました。「『From A』が、アルバイトという雇用形態のイメージをめちゃめちゃポジティブにした。会社に縛られず、いろいろな場所を転々として稼ぐ、引く手あまたな職業という前向きな意味があった」と振り返るのは赤木氏です。

人材コンサルタントである常見氏は、「フリーターってかっこよかったんだよね!社会を渡り歩く自由人みたいなね。学生時代、肉体労働系のバイトを結構したんですけど、そうすると役者志望のお兄さんとかいっぱいいたからね。実際、バイト先の先輩はVシネマデビューしていたし」と、フリーターが"かっこいい生き方"として認知されていた時代があったと語ります。

1992年に放送されていたドラマ『愛という名のもとに』では、江口洋介がフリーター役を演じていました。エリート会社員役の唐沢寿明と教師役の鈴木保奈美ら、主役7人のうちの1人として登場したフリーター役・江口洋介は、肉体労働系のアルバイトで貯めたお金で、世界に飛び出そうとしていました。その斬新なライフスタイルにだまされたと、速水氏は振り返ります。

憧れのライフスタイルであったフリーターですが、新卒で正規採用されることが当たり前という価値観が醸成された2000年代以降、好ましくないイメージが定着します。就職氷河期の煽りを受けて、新卒で就職が叶わなかった若者が、「フリーターにならざるを得なくなった」のもこの頃からです。

「フリーターという生き方が市民権を得ると、今度はそれに対するやっかみみたいなものが出てきた。自由なんだから自己責任でしょみたいな風当たりが強くなった」(赤木氏)

いま歓迎されている生き方も、数年後には見方が変わってしまう可能性もある。そのことを象徴する事例といえそうです。

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