『永遠の0』の著者が語る「日本が戦争で負けた理由」

ゼロ戦と日本刀 美しさに潜む「失敗の本質」
『ゼロ戦と日本刀 美しさに潜む「失敗の本質」』
百田 尚樹,渡部 昇一
PHP研究所
1,512円(税込)
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12月21日に公開となるV6の岡田准一主演の映画『永遠の0』。戦後世代の姉弟が、ゼロ戦パイロットとして散った祖父の生涯を調べるかたちで進む物語は、販売部数300万部を突破するベストセラーとなりました。

その『永遠の0』原作の著者・百田尚樹さんと、同作を「不朽の名作」と呼ぶ上智大学の渡部昇一名誉教授との対談を収録したのが、書籍『ゼロ戦と日本刀 美しさに潜む「失敗の本質」』です。

百田さんは本書で、日本が第二次世界大戦で敗戦した理由の一因に、今も変わらない"日本の空気"があると指摘しています。

「ネガティブな状況ははじめから想定しない、という空気があって、予防の議論に至らないのです。いうなれば、言霊主義みたいなものです。結婚式で『切れる、別れる』を使わない、受験生に『落ちる』といわないという忌み言葉と一緒です。しかし戦争に敗れれば即、国が滅びるわけですから、万が一を考えずにおれません」(百田さん)

百田さんは、日本の海軍には「攻撃一辺倒で、敵軍に攻撃を受けたらどう対処するかという発想がなかった」と語ります。

その一例として挙げているのは、軍の上層部がパイロットたちに強いた性能が落ちたゼロ戦での戦いです。資金難のために、ゼロ戦の装備を最小限のものにせざるを得かった日本軍。当然パイロットたちは、自らの命を守るべく「防弾板をつけてくれ」「燃料タンクも防弾用にしてほしい」などと要望しました。しかし、時の参謀はこの決死の要望を「要は撃たれなければよいのだろう。もっと頑張れ」と一蹴。何の解決策も提示しないまま、精神論で問題を片づけました。

異常ともいえるのが、ゼロ戦パイロットたちの勤務状況です。百田さんは、取材したゼロ戦パイロットの証言をもとに、その劣悪な労務管理を語っています。ゼロ戦パイロットの"出動"は、片道3時間をかけてガダルカナル島に着き、上空で十数分戦ったのち、ふたたび三時間をかけて帰るというような激務。しかも、当時の空戦記録を調べると、パイロットたちは通常で週2回、3回、多い時は週に5回も出撃していました。20代の若いパイロットが中心だったとはいえ、3日連続で出撃などしたら、体力や集中力は持ちません。まるで、高校野球のピッチャーが甲子園での連投で肩を潰すように、摩耗していきました。

一方のアメリカ軍では、パイロットたちのローテーションがきっちり決まっていました。一回襲撃すると次の出撃まで何日か休み、そのローテーションで一、二ヶ月を戦うといったん前線から引き上げて、後方勤務にまわることができました。疲労やストレスを軽減すると同時に、前線で戦う際のモチベーションを上げる手段でもありました。

また、パイロットの死亡率は日本側が圧倒的に高かったとも指摘しています。アメリカ軍は撃墜や海上での不時着に備えて、潜水艦や飛行艇によって救助するシステムを確立していました。対する日本軍の場合は、そのような救助の仕組みは皆無で、撃墜は死を意味しました。

そのような状態を知っていたのにも関わらず、上官たちはゼロ戦の出撃命令を出していました。『永遠の0』では、百田さんが主人公の一人であるゼロ戦パイロットに「自分たちは機械じゃない。生身の人間だ」と語らせています。

「人よりも飛行機が大事という発想のもとで、優秀なパイロットが出撃を繰り返し、命を落としていったのです。日本海軍はとことん人間を大事にしませんでした。資源のない国が、モノを大事にして人を大事にしなかったことが、敗戦を招いた、といってもよいでしょう」(百田さん)

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