"いじめ"と"いじり"は同じもの? 教室内に存在するカースト制度の実情

教室内(スクール)カースト (光文社新書)
『教室内(スクール)カースト (光文社新書)』
鈴木 翔
光文社
907円(税込)
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 1月16日、小学校時代にいじめにあっていたという男子学生が、"いじめにあっていたのは教育委員会のせい"として、インターネット掲示板に殺害予告を書き込んだ容疑で逮捕されました。

 学校側は「いじめとしての認識はなかった」と記者会見で発表。これは"いじめ"という言葉が非常に曖昧な言葉であり、"悪ふざけ"や"いじり"などの行為と判断がつきにくいからではないかと、書籍『教室内カースト』の著者で東京大学学術研究所の鈴木翔さんは同書の中で述べています。

 鈴木さんは、いじめ以前に生徒内には絶対的な力量関係が存在するともいいます。

 「中学校以降になると、個々の生徒が何らかのグループに所属し、それぞれのグループに名前をつけて、グループ間で"地位の差"を把握しています。そこでの"地位の差"は、"いじめ"として表現されることはなく、日常的な教室の風景として語られていく傾向があります」(鈴木翔さん)

 クラス内に自然とできるグループは「ギャル系」、「清楚系」、「イケてる」、「イケてない」、「地味系」など。名付け方には差があるものの、グループは生徒たちによって認識され、そのまま権力の階級として存在しているそうです。階級が上とされるグループから下のグループへの"いじり"は、理不尽な行為であっても"いじめではない"と認識されやすく、日常的に行われていることなので、教師もいじめだとは思いません。理不尽な行為を受けた当人が悩み苦しんでいても、周囲の認識とは異なっていることがあるようです。

 本書は、学生や教師へのインタビューや、中学生への大規模アンケートのデータに基づいて、日本の学校教育の実態に迫った本。大人が決して立ち入ることのできない、"子供たちの現実"に触れることができるかもしれません。

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