大リーグ養成ギプスは児童虐待!? 『巨人の星』がインドでリメイク
- 『飛雄馬、インドの星になれ!―インド版アニメ『巨人の星』誕生秘話』
- 古賀 義章
- 講談社
- 1,404円(税込)
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1月30日、大阪府の松井一郎知事が2月3日から6日の4日間、府内企業の経済交流促進のためインドに出張することが明らかになりました。1 月31日付の産経新聞によれば、医薬・医療関連の在阪企業が同行し、現地でインド企業との商談会を開催するほか、大阪への企業誘致に向けたセミナーを開き松井知事が大阪の魅力をアピールするとのこと。すでに自動車会社を中心にインド進出が成功していることもあり、今回の渡印に期待が高まっています。
日本からインドに渡って成功を収めているのは企業だけではありません。現在、インドの人々に最も受け入れられているメイド・イン・ジャパンはアニメ。特に、『クレヨンしんちゃん』、『忍者ハットリくん』、『ONE PIECE(ワンピース)』など日本でも人気の高い作品がヒット中。コスプレするアニメファンも急増しているそうです。
さらに、日本の国民的アニメ『巨人の星』のリメイク版『スーラジ ザ・ライジングスター』が2012年12月から放送開始され話題に。『巨人の星』は日本の高度成長時代を象徴する作品ということもあり、現在、経済成長真っ只中のインドでもヒットが予測されています。
ただし、驚きなのはインドでは野球がメジャーではないため、星飛雄馬がクリケット選手という設定になっていること! 書籍『飛雄馬、インドの星になれ!』によれば、文化や倫理観の違いによる壁を越えるのに苦労したリメイク制作の経緯が記されています。
その中でも興味深いのは、「大リーグ養成ギプスは倫理的にNG」というもの。理由は、オリジナルの『巨人の星』ではギプスにバネを使っているので児童虐待のように見えるのだそうです。"大リーグ養成ギプス"といえば『巨人の星』のシンボルともいえるもの。本書の著者でリメイク版のチーフプロデューサー・古賀義章さんは"ギプス描写の実現"に奔走しましたが、同作自体をよく知らない現地スタッフたちは「なぜ、そんなにギプスにこだわるんだ?」と不思議そうに言うばかりだったとか。
最終的に"自転車の廃チューブ"をバネの代わりにすることで養成ギプスは実現されましたが、ここに行き着くまでに、かつてインドを支配していた帝国の鎧をモチーフにしたギプスまで考案したそう。ほかにも「ちゃぶ台返しは食べ物を粗末にしているように見えるからNG」や、「子どもが観る番組なので星一徹の飲酒はNG」など、気になる実話が満載。海外へ羽ばたく国民的アニメの誕生秘話は、これからますます求められる"異国文化の相互理解"に役立ちそうです。