ナメクジたちの悲しい18禁話? 知られざる虫の激しい交尾
- 『邪悪な虫』
- エイミー スチュワート
- 朝日出版社
- 1,944円(税込)
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虫嫌いの人には受け入れがたい事実かもしれませんが、現在、地球上には100京の昆虫がいると言われています。その種類、なんと100万種超え。考えただけでも、モゾモゾしてくるような数字です。
そんな虫たちの面白くて恐ろしい逸話を集めたのが、ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー『邪悪な虫』。作家でも科学者でも医者でもない、自然界に魅了された作家・エイミー・スチュワートが独自の切り口で虫たちの変わった習性を紹介しています。
例えば、恐ろしい逢い引きの話。西海岸一帯に生息するナメクジのバナナスラッグは、一見穏やかそうな虫ですが、かなり激しい交尾を行うそうです。実はこのバナナスラッグは両性具有。オスメス両方の生殖器官を持ち合わせているのです。
バナナスラッグの交尾がはじまろうとすると、お互いがS字型になり、しばしば相手を噛むのです。この噛むという行動は、ナメクジにとっては通常の行動なのですが、双方とも穿たれ、打ちのめされてしまうことがあるそう。
「2匹は数時間にわたってもつれ合う。やがて離れようとすると、絶望的にくっついたまま離れられず、お互いのペニスを咬み切るしかなくなることもめずらしくない。この行動はアポファレーションといって、進化の袋小路のように見受けられる」
想像するだけでかなり激しい交尾のよう。しかし、咬み切られたことで死ぬことはないそうで、また、改めて交尾をすることが可能なのです。そうです、彼らは両性具有なので、今度はメス役専門として交尾を行うことができるのです。
交尾の激しさに関してはカマキリも負けてはいません。よくメスはパートナーを食べると言われますが、これは毎回ではないそうです。とはいっても、食べられては、オスとしてはたまったものではありません。
交尾が行われる際、オスは用心深くメスに近づき、最近なにか食べたかを見極める必要があるのです。充分に食事をとっているようだと、オスも生き残る可能性が出てくるからです。もし、メスが空腹だった場合は、オスは別のパートナーを探すか、メスにばれないよう、離れたところから跳び乗るのです。
しかし、もしバレてしまったら、そこには悲しい現実しか残っていません。
「オスが手を尽くしているにもかかわらず、メスは交尾中にくるりと向きを変えてパートナーの頭を咬みちぎりがちだ。こうなっても交尾は続き、メスが食べ終わると同時にオスの活動は終わる。逢い引きが終わると、オスはハネしか残っていない」
なんと悲しい出来事でしょう。自分の命を引き換えに子孫を残すのです。
しかし、考えようによっては、メスから逃げつつも交尾を行なっているカマキリは、オスとして優秀であり、そういったオスの子孫こそ、数多く残った方が良いのかもしれません。ただ、いずれにせよ、命懸けで子孫を残そうとする彼らの本能には感服します。