トム・ソーヤーが元祖? 「てへぺろ系リーダー」の魅力

トム・ソーヤーの冒険 (新潮文庫)
『トム・ソーヤーの冒険 (新潮文庫)』
マーク トウェイン
新潮社
637円(税込)
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 最近、てへぺろ系リーダーが増えているそうです。失敗をしても愛嬌で上手く場を収め、周囲の人間もなぜか「仕方ないなぁ」と丸め込まれてしまう。そんな人を魅力的で羨ましく思うと同時に、苦手意識を持ってしまう人もいるかもしれません。

 しかし、書籍『トム・ソーヤーの冒険』を読むと、彼らの「不思議な魅力」をうまく飲み込むことができます。同書は、わんぱく小僧、トム・ソーヤーの永遠の少年時代を描いた物語。

 まず、彼は、「嫌な事を忘れるのが上手い」。おばさんに怒られてもすぐに新しく面白いことをみつけて没頭します。このストレスフルな社会で生きていくためには、身につけたい姿勢です。

 そして、「人を巻き込む才能もある」。せっかくの休日なのに仕事を抱えて、憂鬱になることもあるかもしれません。それはトムも同じです。塀の塗り直しという単調作業をおばさんに言いつけられ、意気消沈することもあります。

 しかし、そこで落ち込んで終わらないのが彼の凄いところです。「休日に仕事なんて大変だね!」と通り掛かりの男の子にからかわれたトムは、こともなげに答えます。

 「塀に漆喰塗るチャンス、毎日くるか?」

 なるほど、新しい発想です。凄く楽しそうに、誇りをもって仕事を続けるトムの姿に惹かれ、はじめは笑って傍観していた男の子たちも最終的に全員塀を塗る手伝いをすることになります。思えば、周りにいるてへぺろ系リーダーも、いつのまにか沢山の人を巻き込み味方につけるのが上手いですよね。

 もちろん、女の子相手でも強みを発揮します。手で隠された下に何が書かれているのか知りたいと、隣に座った女の子に頼まれてもトムはなかなか見せようとしません。何度かの押し問答の末、やっと手をどけたそこにはI love youの文字が。

 なんてサプライズ上手なのでしょう。人の気持ちを上手くつかむコツをわかっている彼が、もし今の日本にいたならば、立派なてへぺろ系リーダーとして活躍しているのではないでしょうか。
小さい頃一度読んだ冒険小説、視点を変えてもう一度手にとってみてはいかがでしょう。

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