2030年の社会を担う若者たちは、未来に対してネガティブなのか?

二十年先の未来はいま作られている
『二十年先の未来はいま作られている』
日本経済新聞出版社
1,728円(税込)
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 「2030年代に原発ゼロを目指す」、政府の新エネルギー・環境戦略に盛り込まれた文言です。そんな2030年について、一つの企画が動きました。書籍『二十年先の未来はいま作られている』のなかで紹介されている「MIRAI DESIGN LAB.」は、120年の歴史のなかで電通と博報堂がはじめて共に立ち上げたプロジェクト。

 2030年に社会の中心を担っている大学生や大学院生が、「2030年の未来をよくする、コミュニケーションアイデア」を提案し、それを集結したものを社会につなげていこうという取り組みです。応募作品のなかから5作品が同書に掲載されています。

 そもそも、彼らは未来に対してポジティブなのでしょうか。東京大学大学院、慶應義塾大学、九州大学大学院の学生らはこのような考え方をしているようです。

「僕はどちらかというとネガティブかもしれません。3.11の大地震やその後の原子力発電所の爆発で、日本の将来に絶望しました。政治家はあのとき、原発は爆発していないと発表しました。でも、繰り返し流されたニュース映像は、どう見ても爆発してるじゃないか、と思ったんです。政治家はこのままでいいのか? そう考えると、これからの日本は本当に民間が引っ張っていかなければならない」

「僕の場合は、あまり未来に絶望はしていません。むしろ、この国にあって、ほかの国にはない、いい意味での特質をどう育てて大きくして、楽しい社会をつくっていくかということに関心があります。僕の場合、アニメ作品から未来を考えることが多いのですね。『サマーウォーズ』のようなロボットアニメ系が好きなのです。海外ではよくSF作家が未来のビジョンを提示したりするのですが、日本の場合は、漫画やアニメのなかにそういう面があると思います」

「日本はたくさんの課題を抱えています。その課題は、これから先、他の国も抱えることになるものが多い。だから、どんどん解決案を出していくような、世界に先駆けて実験していける国になるポテンシャルがあるということだと思うのです。その点をうまく生かしていけないかと、それを考えていました」

 未来に対する考え方は様々。ですが、世の中に漂う雰囲気はネガティブなものが多いのではないでしょうか。良くも悪くもかならず未来はやってきます。しかし、学生のなかには、「未来は受け入れるもの」とじっとしているのではなく、「未来は作るもの」とアイデアを駆使し、行動につなげようとしている人もいます。

 同書のあとがきには、「大人世代は、世代の壁を作っているのは自分たちの心であることを一刻も早く気付かなければならない。若者世代は、拍子抜けするほどオープンで、大人の想像を遥かに越えた才能と意志を持ち合わせている」と残されています。

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