「ソーシャルメディア疲れ」の原因は、お笑いが生んだ「ツッコミ」だった?

一億総ツッコミ時代 (星海社新書 24)
『一億総ツッコミ時代 (星海社新書 24)』
槙田 雄司
講談社
886円(税込)
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 滋賀県大津市の中学生が自殺したいじめ問題。教育委員会や学校側の対応なども問題視され、さらにインターネットでの中傷なども目立ちました。

 ネット上では、いじめたとされる同級生の実名や、その家族と間違えられた人を非難する書き込みが相次ぎ、その人の職場に苦情の電話が殺到するなど、無関係の人々が被害にあいました。ネット情報の拡散は警察では制御することができず、広がってしまった誤った情報は今もネット上に存在しています。

 インターネットやTwitterなどのSNSが急速に普及し、誰もが匿名で自由に発言できる世の中が生んだこのような状況について、「マスコミの尻馬に乗って安易な魔女狩りをしている」とお笑い芸人の槙田スポーツさんが槙田雄司という本名で著した書籍『一億総ツッコミ時代』のなかで述べています。

 槙田氏は「マスコミは露骨に権力を誇示するようなことはせず、別のところからふんわりと世の中をコントロールしています」と指摘し、本来お笑いの世界の中だけであった「ツッコミ」が今では日常に取り入れられ、さらにはネットのような顔の見えないところでも「ツッコミ」が行われているといいます。

 例えば、「あのタレントは整形だ」とか、「あの政治家はバカだ」とか、他人のことについての批判は以前なら心の中だけのものだったかもしれませんが、今では誰もが他人を批判する言葉を容易に世の中に発信できてしまいます。さらに、それは上から目線でものを言うような感覚で行われているのです。

 槙田氏はこのようなお笑いのルーツであった「ツッコミ」が、日常の中で他罰的な武器と化してしまったことを懸念しています。15年以上芸人として活動してきた槙田氏、「"あなたが持っている剣は、思っている以上に危ないよ"と思うわけです。お笑いの都合のいい部分だけを引っ張り出して振り回している。それはみっともないからやめた方がいいと思うのです」と語っています。

 本書では、このように誰もが「プチ評論家」と化した現代をタイトルにもなっている「一億総ツッコミ時代」と称し、お笑い芸人ならではの「ボケ」の考えでこの息苦しい世の中の空気を打破しようと提言しています。「人の振り見て我が振り直せ」という言葉がありますが、他人の弱いところを見つけてツッコむ前に、自分はそれを言えるほどのことをできているのかと、立ち止まって考えさせられます。

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