名前を知っているだけじゃもったいない! 古典名作『レ・ミゼラブル』
- 『レ・ミゼラブル 全4冊 (岩波文庫)』
- ヴィクトル ユーゴー
- 岩波書店
- 3,888円(税込)
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12月にアン・ハサウェイらの映画公開があり、2013年には帝国劇場のミュージカル公演題目として多くのファンの心をときめかせる『レ・ミゼラブル』。10月開幕のグランプリシリーズ・スケートアメリカでは金妍児がフリーの曲として氷上を舞う予定もあるなど、ここにきて盛り上がりを見せている古典名作です。名前は誰しも一度耳にしたことがあるかと思います。しかし、文庫4冊の大作を前にして挫折した人も少なくないでしょう。この機会に、改めて手にとってみてはいかがでしょうか。
パン一切れを盗んだ罪で19年の服役生活を送っていたヴァルジャンは、解放されても囚人だったことを理由に邪険に扱われ続けます。荒んだ心を抱えながら教会の高価な銀の燭台を奪ったにも関わらず、その罪を問わないミリエル司教の優しさが彼を正直な人間へと導いて行きます。そんな矢先に自分と間違えて逮捕された男が現れて...。
著者、ユーゴーは小説冒頭で述べます。「また世界中のどこかで社会的窒息が存在するかぎり;----別の言葉でもっと重要さをこめていえば、地球上に無知と貧困が存在するかぎり、『レ・ミゼラブル』のような特質を持つ本はけっして無駄ではないはずである」
一見脱線かと思われるような記述を多く含み、主人公ジャン・バルジャンはなかなか出てこない。読み通せるのか不安になる時もあります。しかし、節々に見え隠れする19世紀フランスに対するユーゴーの鋭い視点は私たちに問い続けます。より良き世界とは何か?より良き人間とは何か? それら総てを探し求める登場人物たちは社会の端役に過ぎないけれど、その姿はどこか3.11以降の私たちに重なるのではないでしょうか。
自分にとっての「正しさ」とは何だろうか、そして、「絶対」とは。生きることは、実用書に模範解答がありません。
読書の秋がやってきました。美しい紅葉を求めて旅行に出かける人も多いと思いますが、当時の銅版画の挿絵を楽しみながら、濃密で壮大なこの名作に込められた小さな「祈り」を探す旅はいかがでしょうか。