「裏切りに弱く、それに厳しい」二次元恋愛にいそしむ人々の特徴
- 『迷い婚と悟り婚 (PHP新書)』
- 島田 雅彦
- PHP研究所
- 799円(税込)
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異性とうまく付き合えない男女が増えてきています。現在は、未婚男性の約三分の二、未婚女性の約半分が、異性と交際していないといった状況なのです。
国立社会保障・人口問題研究所の2011年の統計によると、「交際している異性はいない」という未婚男性が全体の61.4%(前回2006年、52.2%)、女性が49.5%(同44.7%)という結果がでました。その反面、いずれ結婚しようと考えている未婚者の割合は、男性86.3%、女性が89.4%だそうです。
そして、注目したいデータがあります。「交際相手を持たず、かつ交際を望んでいない未婚者」は、男性で27.6%、女性は22.6%いるのです。こんなにも恋愛に無関心な人がいるのか、と驚きますが、この調査では交際相手が人間を指しています。交際相手がフィギュアだったり、アイドル、アニメキャラ、歴史上の人物など、二次元のものを相手にしている人は含んでいません。
小説家の島田雅彦氏は、書籍『迷い婚と悟り婚』のなかで、自らが教える大学の生徒には、旅行にお気に入りのフィギュアを連れて行き、観光名所で一緒に写真を撮って、夜になるとベッドに寝かせて話しかけている人がいるそうです。彼曰く「僕がそばにいないと彼女(フィギュア)はダメになってしまう」そうです。
島田氏はこういった二次元恋愛にいそしむ人々の特徴を、「裏切りに弱く、それに厳しい」と分析しています。
「萌えというのは自分の妄想の中での自分との対話である。わかりやすくいえば、一方通行であり、モノローグであり、性愛の対象が予定調和の世界に収まっている。彼らにとっては、お気に入りのキャラは常に自分のほうを見ていてくれなくてはならず、たとえ、物語の中であっても、誰かと恋などし始めようものなら、憤りで自己制御ができなくなる。私の大学の教え子たちはそういった裏切りのキャラを後ろ向きにして自室に飾っている」
アイドルといえば恋愛ご法度。今では、AKB48などで恋愛が発覚した場合、大きな反響となります。そして、裏切りが発覚した時のファンの反動は激しい嫉妬として現れます。自分にとってかけがえのない崇拝の対象の裏切りは許せないものなのです。
「もとより二次元恋愛の対象も所詮は人の手によって作り出されたものであり。自分の思い通りになるはずはない、という事情がある」と島田氏がいうように、二次元恋愛とはいえ、思い通りにいくことばかりではないのです。
二次元でもある裏切り行為。三次元では裏切りの連続です。政治家やキャバ嬢など、午前中と午後で言っていることが正反対、といったことは多々あります。島田氏は、「二次元でも三次元でも、どっちみち裏切られるのだから、裏切りへの耐性を身につけるしかないのだ」と言います。