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アートディレクター・吉田ユニさん(後偏)

エジソンから菌まで、吉田ユニさんの仕事と本の関係は

 西洋のおとぎ話のような華やかで不思議な世界観を持つ、今注目のアートディレクター・吉田ユニさん。そんな彼女の仕事や世界観には、本の影響や嗜好がはっきり表れているようです。

 「子どもの頃は偉人の伝記が好きでした。一番好きだったのはエジソンでしたね。私も物を作ることがすきだったので、ものすごく興味深くて。とても有名ですが『99%の努力と1%のひらめき』という、その言葉はずっと今でも心に残っていて、デザインにおいても発明と同じだなと思っています。」(吉田ユニ)

 物作りに対して「ひらめきだけでも努力だけでもいいものはつくれない」と語る吉田さんは、特にこの仕事を始めてから身に染みて実感したと言います。

 「本を読んで、自分の引き出しにストックされたものが、何かを作っているときに『ひらめき』に結びついていくことはたくさんあります。その『ひらめき』だけでもある程度は形になるのですが、それをどこまで突き詰めて着地させるかが必要なんですよね。学生の頃とかは思いついたアイディアを形にするだけでも満足していたんですが、実際に仕事を始めて、会社に入っていろいろ学んで、形にするだけじゃなくて、それをどう魅せるか、そこからつめていく作業がむしろ一番大事なんだと教わりました」

 また、吉田さんは図鑑が好きで、ご自宅にも20冊くらいあるそうですが、その好きな理由も吉田さんの仕事の世界観に結びついているようです。

 「ちょっと前に『日本変形菌類図鑑』という図鑑を買ったのですが、それがとても面白いんですよ。菌なんだけど模様や形が美しくて、そういうのが自然にあるっていうのが興味深くて、色とかも実際に作れない発色とか、天然の物だからこその美しさがあるんです。私は、空想の世界よりも、もともと存在するけど、普段生活しているだけでは見えない、そういうものが本当はその中に広がっている、みたいなのが好きなんです。例えば、顕微鏡(トルツメ)も好きなんですけど、肉眼で見てるものとは違う世界がそこに広がっていて、そういうのを発見するのがわたしにとってはファンタジーですね。」

 吉田さんが以前、手がけた香港のファッションブランド「b+ab」のアートディレクションはまさにその典型。

 「その作品はファッションならではの、新しい視点を表現したくて、部屋を真下から撮影したんです。実際には存在している世界だけど、普通は下からって見たことない視点だし、なんかその実際にあるけど見たことないというのを表現したくて、そういうビジュアルになったんです。」

 最後に今、一番読んでみたい本を聞いてみると、意外な答えが。

 「私、小説はほとんど読まないんですよ。ストーリーを追っていくうちにいろいろ想像してしまいすぎて次に進めないというか、そういうのがあって、滅多に読まないんですよね。でも最近、友人に薦められた岸本佐知子さんの『変愛小説集』は読んでみたいんです。木に恋してしまう女性の話とか、いくつかお話がはいっている短編集でとても興味あります。」

 本からいろいろな影響を受け、それを自然と仕事に生かしてきた吉田ユニさん。今後の彼女がどんな本に出会い、どんな世界観を作っていくのか楽しみですね。

<プロフィール>
吉田ユニ
1980年、東京生まれ。女子美術大学卒業後は、日本を代表するアートディレクター・大貫卓也氏と野田凪氏に師事し、2007年に独立。広告やグッズデザイン、CDジャケット、本の装幀など幅広いアートディレクションを手がける。最近では、映像の分野にも手を広げ、CMのディレクションやMVの監督もこなしている。

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