もし「妻が死んだふり」をしていたら、あなたはどう返す?

家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。2
『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。2』
K.Kajunsky
PHP研究所
1,188円(税込)
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 質問投稿サイトにはいろいろな疑問が投げかけられます。「検索すればすむのでは?」 と思わざるをえない話もありますが、時には驚くべき質問が上げられることも。

 おそらく、そのなかでも1、2を争うのではないかというのが、質問主K.Kajunskyさんの『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』。そもそものネタのオリジナリティが魅力ですが、コミック化され、さらにそのユニークさに磨きがかかりました。

 知っている人も多いかと思いますが、簡単に説明すると、サラリーマンの質問主が帰宅すると、専業主婦の奥さまが死んだふりをしている。最初のうちは、玄関前に倒れているだけだったのが、口から血を流したり、矢が頭を貫通していたり。どんどんエスカレートして、迷彩服を着て銃を持ったまま名誉の戦死をとげていたり、段ボールで作ったワニに頭をかみつかれていたり。毎日のことだし、本人に理由を聞いても、「いたずら」というだけで、真意がわからない夫はYahoo!知恵袋に投稿するにいたったわけです。

 妻・ちえさんの存在自体がおもしろすぎるのですが、彼女を冷静に観察する夫の口ぶりが何とも言えないいい味を出しています。

 発売になったばかりの続編『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。2』でも、夫の妻への温かいまなざしは健在です。たとえば、夫が帰宅すると「2050年の食卓を演出する未来人」の妻(頭にはヘンなアンテナが・・・)になっていて、料理がペースト状になっていた時のこと。夫は驚きの声を上げるのではなく、心の中で「ああそういうテイですか、今日は」と受け、「さいきんの人はあごが退化していますからね」と発言してみる。妻の意図をくみ、彼女にさりげなく合わせる優しさが、そこにはあるのです。

 ネット上ではただの「おもしろい質問」であったものが、書籍になったことで夫婦の物語として成立した同作品。とりたてて大きな事件が起こるわけでもない2人の日常は、自然と自分の大切な人のことを思い出させます。元気をもらえてほっこりできる不思議な読後感が魅力です。

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