「知識」と「知恵」の違い あなたは明確に答えられる?
- 『8はじける知恵 (中学生までに読んでおきたい哲学)』
- あすなろ書房
- 1,944円(税込)
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「知識と知恵ってどうちがうんですか?」
突然ですが急にこんな質問をされたら、あなたは即答できるでしょうか? ちょっと考えてしまいますよね。
そんな方は『はじける知恵』を読んでみてはいかがでしょうか? 本書は「中学生までに読んでおきたい日本文学」に続く"哲学"シリーズの最新作。毎回さまざまなテーマで多彩な書き手の作品の文章を紹介する同シリーズですが、今回のテーマは「知恵」。高峰秀子『文章修業』、茨木のり子『美しい言葉とは』、白洲正子『智恵というもの』など、学者、思想家、小説家、詩人、劇作家、映画監督、俳優、芸術家などさまざまな書き手による「考える」ためのヒントがちりばめられた19編から成っています。
このシリーズ、「中学生までに」と題するには内容が少し難しい気もしますが、ページの下部に難解な言葉や時代背景がイラスト付きで説明されており、小学校5年生以上で習う漢字にふりがなが振られているので、スラスラと読み進めることができるレイアウトになっています。また、あとがきには各編の醍醐味が解説されているので理解を深めたり、逆にそこから読んで気になるものから読みすすめたりするのもいいかもしれません(これもひとつの知恵?)。
内容を少し紹介すると、学校に通うことができず、仕事を通じて言葉や文章を身につけていった女優の高峰秀子や、生活の中で意識せずに存在する言葉の美しさを追求した詩人の茨城ゆり子は、共に「文は人なり」という哲学にたどり着きます。
これについて、編者の松田哲夫さんは、「知恵のある人は、そのたたずまいや立ち居振る舞いなどにその気配がただよってくるものです。とりわけ、その人が発する言葉や書く文章には、知性がはっきりと表れてくるもののようです」と解説しています。
哲学書や講義で学ぶ小難しい「哲学」ですが、私たちの日常の暮らしの中や気軽に読んでいる文章の中にも、哲学するためのヒントは無数にちりばめられています。インターネットでググれば、数秒で回答に辿り着く情報社会では、知識の洪水の中で思考停止状態になりがち。しかし哲学し、考えるというアクションを取り入れることで"知識"を"知恵"として身につけることができる。実は「考える」ってすごくおもしろいんです。
ちなみに冒頭の「知識と知恵ってどうちがうんですか?」という疑問ですが、本書では「お金でいうなら知識は貯金で、知恵はその使いようだ」と回答しています。人の数だけ存在する哲学ですが、さてあなたの回答はいかがですか?