「主婦」「僧侶」「会社経営」「50代半ばでデビュー」異色の小説家・沼田まほかる氏の本屋大賞ノミネート作『ユリゴコロ』
- 『ユリゴコロ』
- 沼田 まほかる
- 双葉社
- 1,512円(税込)
- >> Amazon.co.jp
- >> HonyaClub.com
- >> エルパカBOOKS
昨年からじわじわとその名前を浸透させている、沼田まほかる氏。変わった名前だけではなく、「主婦」「僧侶」「会社経営」、そして、50代半ばで初めて書いた小説でデビューといった、"異色づくし"が話題となっています。
デビュー作『九月が永遠に続けば』は、2004年に第5回ホラーサスペンス大賞を受賞したものの、08年2月に刊行された文庫版は、2年以上初版2万部どまりでした。ところが、昨年、「おすすめ文庫王国2008」国内ミステリー部門第1位という帯を付けたところ、わずか4か月の間に増刷を繰り返し、15刷50万部に達するなど人気が爆発。ようやく本格的に脚光を浴びるようになりました。ホラーサスペンスなので、怖さはもちろんあるものの、そのどこかに「愛」や「恋」といった要素が散りばめられている独特な作風です。
そんな沼田氏の最新作『ユリゴコロ』は、今年になって第14回大藪春彦賞を受賞。また、2012年本屋大賞にもノミネートされています。
主人公の婚約者が突然失踪。それだけでなく、父が末期のすい臓がんと診断され、母が交通事故で急死。主人公は立て続けに不幸に見舞われます。そんな折に、偶然実家で見つけた4冊のノート。「私のように平気で人を殺す人間は、脳の仕組みがどこか普通とちがうのでしょうか」といった言葉で始まるノートは、何人もの人を殺してきた、殺人者の告白だったのです。同時に、昔の記憶を思い出した主人公は、4歳のころに自分の母親が入れ替わったのではないか、という奇妙な記憶を取り戻しました。このノートの持ち主を探し始めた主人公の結末は......。
「こんな不思議な小説は初めて読んだ。恐怖や悲しみが、いつの間にか幸福に捻じれていく」と、桐野夏生氏が評価する『ユリゴコロ』は、不気味で猟奇的、しかし、美しいといった恋愛ミステリーです。